【桜蘭高校ホスト部】







「何サ、鏡夜」

「お前コーヒーをブラックで飲むようになったのか?」








…。









「あぁ、まぁ…この方が豆の味が出て…」



良いと思いますよ?



「そうか」

鏡夜が静かに呟く。

「きょーちゃん、ちゃんのコーヒーの好みまで知ってるんだねえ〜」

ハニー先輩の言葉に、鏡夜はパタンとファイルを閉じる。

「当然でしょう、幼馴染なんですから。でもブラックを好むようになったとは知りませんでした」


どこか言葉にトゲを感じた。











「そ、そうなのか!!??」










叫んだのは環。



「何、と鏡夜先輩が幼馴染って知らなかったの、殿」(光)

「意外だね、僕等も最近知ったんだけど…と結構付き合い長いんでしょ、殿も」(馨)

双子が代わる代わるに言う。

「そりゃぁ社交界に出た時から知っているが…」(環)

「まぁそれはそうだろうな。俺は普通の友達だったが、環は表だけの付き合いだろう?」(鏡夜)

「そ、そんな冷たい…そんな事無いな、!!俺たちは心でも繋がって…」(環)




「いません」




繋がっているか、そんな。




「ひどいっ!!!ハルヒ〜、がいじめる〜!!!」


「…ほんっと、セクハラで訴えますよ。セクハラ先輩

何処か遠い目をしてハルヒが言ってのけた。





「!!!!!(ガ―――――ン!!)」





あー…凹んでる凹んでる。


「じゃぁ今日はこの辺で失礼します」


ハルヒはそう言うと、いじける環を残して部室から出ていった。


「「じゃぁ僕等も帰ろーっと」」(双子)

「僕たちも帰ろーか、崇」(ハニー)

「…(こくん)」(モリ)











【放課後其の一】

















じゃぁあたしも帰るか。






、今日うちによって帰らないか?」


「え…何で?」

「お前の好きなコーヒー豆が手に入ってな、どうだ?」



「行く!!」



「そうか」



…っ。



「どうした?」



…だって、鏡夜があまりにも嬉しそうに笑うものだから…。










…あれも計算か?










「じゃぁうちの車に乗っていけ、月曜の朝も送らせる」

「やった♪」



と、まぁこうしてコーヒー豆につられた訳だが。



黒い長い、大きい車に乗って、鳳家に向かう。


「どうした、珍しくもなんとも無いだろう」

「いや、久しぶりだからさ」


対面式。


どんだけ広いんだ、この車内。


「東宮家の1人娘ともあろうお前が、自転車登校とは笑い話みたいだな」


そう言って、鏡夜はくすっと苦笑いを浮かべる。


「笑い話じゃ済まないわ、帰ってきたらシバき倒してやるんだから」


「やっぱりお嬢気質だな」

「冗談よ。自転車も中々よ?…今日月曜と乗らないからって、売らないでよ?」

「自転車なんていくらでも買えるだろう」

「だからって売らなくても…てか、売れないわね、まず」

「…そうか?結構売れてるぞ、『』使用済み商品」


言いながら、鏡夜はファイルを取り出す。










…そ、そのブラックファイルには何が…ッ!!!!










前から気になってたんだよね。


「一番は『使用済みヘアピン』だな、次は『使用済みヘアゴム』」





















あんた何やってんだ――――――――――――!!!!!!!!!





















「ちょっと!!段々数が減っていくなぁ…って思って…っ、


 でもヘアピンって自然に無くなってくもんだと気にしてなかったら…」













あんたかい!!!!

















「良く売れるよ、しかも数があるからね」


「ちゃんと洗ってくれてるんでしょうね!?」

「…(にこり)」






ヒィ―――――!!!






こいつ絶対そのまま売ってるよ――――――!!!







「あたしそっくりのクローン人間が造られたら鏡夜の所為だからね」



「安心しろ、そんな簡単にクローンが造れたら俺はホスト部なんかにいない」








どういう意味だ―――――――!!!









「そうよね、あたしのような美人で完璧な人間は1人で充分よね」


「本気で言っているのか?そうならばそれなりのツッコミはするが…?」



…もう良いわ。



「クローン人間か、退屈しないだろうな」

「あんたも結構な性格よ、全く」


そうこうしている内に鳳家の大きな門が見えてきた。



ガー…っと門が開く。


が、しかし玄関まではまだ距離が。



「庭の造り変わった?」

「あぁ、左右対照にしてみたらしい」

「あたし好きよ、こうゆーの」


そう言いながら、あたしは外を眺める。


すると、やっと玄関に着く。




車から降りる時の仕草も、慣れたもの。




2人とも自然にその儀礼をこなす。




「慣れって怖い…」


「そうでもない、お前とならな」


「…」



どう言う意味さ。



「お坊ちゃま、そちらの方は…」


中から出てきた執事らしき人。


らしきってか、古くからいる竜崎さんだ。


「竜崎さん、お久しぶりです」


「…?」


ゆっくりと御辞儀をして、竜崎さんを見据える。


「…さま!?」

「はい、その節はお世話になりました」

「竜崎、例の豆を」

「はい、坊ちゃま」












てか、前から思ってたんだけど『お坊ちゃま』ってキャラじゃないでしょ、鏡夜さん













庭に面したテラスに通される。



「どうぞ、お姫さま」




あたしも『お姫さま』ってキャラじゃないよ。





「竜崎さん、驚いてたなぁ」

「それはそうだろう、昔は長かった髪も切って…すっかり男らしくなったからな」

「…あたしに対するあんたの発言の方が驚きよ」


やれやれ、と首を振って見せる。


「変わったな、は」


「…そう?」


急に話題をシリアスに持ってくのね。


「鏡夜も変わったでしょう?」

「俺は変わらないよ」

「…そうかしら」


昔は、素直に笑い合えたと思ったケド、今みたいに皮肉じゃなく。


「みんな変わっていく物だと思うけど」

「…そうで無い物もあるさ」

「例えば?」

「…俺とお前の関係、とか」


「あぁ、腐れ縁って奴?」


「そうだな」




綺麗な庭と、美味しいコーヒー、そして鏡夜とあたし。




「それと…俺の気持ちとか」


「…そ、う」


「悪かったな、急に呼び戻したりして」



…何よ、気持ち悪いわね。



急に謝られてもペースが乱れるじゃない。



伏せ目がちに、鏡夜は視線を落とした。



「ねえ…鏡夜。あたしはね、あんたに“会いたい”って言われたから戻ってきたんじゃないのよ。


 …あたしはね、“あんた”に会いたかったから日本に戻ってきたの。それだけよ」



そう、鏡夜に“会いたい”って言われた事、とても嬉しかった。



けど、それ以上に、あたしはあなたに会いたかった。



分かるでしょう?



…」



それだけの事なのよ。



















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鏡夜さん寄りになった。