【桜蘭高校ホスト部】
「「何コレ」」(双子)
「カレーですが何か?」
あたしはしれっと言ってやった。
「それは見たら分かるよ」(光)
「何でカレーなの?」(馨)
「かっらいカレーです」
双子はあたしの目の前でブーブー言ってる。
対面式のキッチン、そしてリビングにカレーの匂いが立ち込める。
「嫌い?」
「「いや好きだけどさ」」(双子)
「じゃぁ問題無いじゃない」
「!俺もカレー好きだぞ!」(環)
「訊いてないけど?」
「そ、そんな冷たい…」(環)
「…環は最近出番が無かったから焦っているんだ、もう少し慰めてやったらどうだ」(鏡夜)
何故お前がストーリーの展開まで口を出すんだ。
「俺ならもっと上手くやるが…?」(鏡夜)
あんた何者だ。
て言うか、誰と話してんですか。
あたしはカレーをかき混ぜながら、寒気を感じた。
「お前も大した奴だな…ケーキがアレって分かってて…」
くっくっく、と楽しそうに鏡夜は笑う。
「先輩、ケーキがアレってどう言う事?」(光)
「何企んでるんですか?」(馨)
「何も…?(にっこり」(鏡夜)
…うわぁ…絶対何かたくらんでる顔だ。
だが、その笑顔があまりにも眩しくて爽やかだったから!!
裏腹に果てし無い黒さを感じました…。
それは双子も同じようで黙った。
「ねぇ…、大丈夫なの?」
「ん?何が?」
ハルヒに言われ、あたしは首を傾げた。
「だって…あの2人だよ?…これ、至って普通のパーティーだし…」
「そうねぇ…まぁ大丈夫でしょ」
にっこりとあたしは笑う。
「!何で俺のカレーだけ具が無いんだ!?」(環)
「…気のせいでしょう」
「な、何を!?ハルヒもそう思うよな!?」(環)
「何がですか?」(ハルヒ)
「具!」(環)
「…グー?」(ハルヒ)
「きょとんな顔も可愛い!!けど違うんだ!!おしいっ!!」(環)
何がおしいのか。
どこまでもハルヒバカな環は放っておいてあたしは他の料理を並べる。
「ちゃん〜、福神漬けが無いよっ!」(ハニー)
「はい、ここに」
「すまないねぇ〜」(ハニー)
「「姫、僕等にも」」(双子)
「え…良いの?」
「何がさ?」(馨)
「僕等は福神漬け食べちゃだめなのかよ?」(光)
「…良いけどさ」
「変なだな、ドバっとかけてやれば良いじゃないか、減るもんじゃないし」(鏡夜)
そんな素晴らしい笑顔で、そんな黒い事言わないで下さい………!!!!
けどそんな黒さに気付くのはあたしだけだ…だが、あたしには鏡夜は止められない!
他のみんなと同じようにね。
「まぁ好きなだけ食べなよ…」
そして食らうが良いさ、キムチケーキ。
「「変な姫」」
変なのはお前等だ!!!
そう声に出して言えない自分が悲しい…。
「美味しいねぇ〜」(ハニー)
「…(こくん」(モリ)
「おいしいですね」(ハルヒ)
「はぁ…みなさんどうも」
照れ臭いや。
こんな賑やかな夕飯は久しぶり。
いつも独りで、とっていたから。
別に寂しいとか虚しいとか感じた事はないけど、やっぱり大勢で食べるのはおいしい。
「あたしの料理は普通ですよ、みなさんがおいしくしてくれてるんです」
自然と笑みが漏れた。
「か、かわいい!!!」
がばぁっ。
「きゃぁ!」
笑った途端に環に抱きつかれましたよ。
「わっ、ちょっと環危ないからっ!」
重いよ〜〜〜〜〜!!
わたわたと暴れるけど、環はいっこうに離れない。
あたしより環のが十数cm身長が大きい。
力も、敵わない。
あ〜〜〜〜!!!
倒れるっ!!!
そう思った瞬間。
べりっ!
あたしから環が“はがされた”
「環、いい加減にしろ」
「きょ、鏡夜…」
助かったぁ…。
でも助けてくれた鏡夜の笑顔がそこはかとなく黒い気がするんですが…っ!?
「ハルヒ!母さんが父さんと娘をはなればなれにさせるよォ〜〜〜(涙」(環)
鏡夜様の怒りに気づけ、環!!!
そんなあたしの心中の訴えも虚しく、環はハルヒへ抱きつく。
「だからって自分に抱きつかないでくださいっ!!」(ハルヒ)
「いつからあたしはあんたの娘になったんだ、コラァ!」
「!女の子がコラァとか言っちゃいけません!!」(環)
泣きながら懇願する環。
くっついてくる環を必死で退かそうとしているハルヒ。
そしてその環をひっぺはがそうとするあたし。
「崇ぃ〜、ちゃんがご乱心だねえ〜」(ハニー)
「…そうだな」(モリ)
あたしたちを尻目に、ゆっくりカレーを堪能する先輩たち。
「「も〜めちゃくちゃ」」
双子も肩をすくめてみせる。
「はっ!!」
環の大声に、みんなシィーンとする。
「な、何…?」
「迎えを呼ばねば!!」
「あぁ、それならばもう呼んでおいた」
「さすがだ、鏡夜!!」
グッジョブ☆と環はウインク付きの笑顔で言い放った。
「「どうしたのさ、殿?」」(双子)
「環は夜10時に寝るのが習慣だ」(鏡夜)
「その通り!!それじゃ、皆の衆!明日学校でな!!」(環)
したっと手をかざし、環は玄関へ向かった。
「環っ」
「何だ、。見送りなら構わないぞ?」
「いやいや」
あたしは苦笑を洩らす。
「ありがとね」
きょとん、と環はあたしを見る。
「ありがと」
今度は呟くように言うと、フと奴は笑った。
「どういたしまして、」
ポンポンと頭を撫でるように触って、じゃっと出ていった。
奴は、何かと人の気持ちに敏感だった。
昔から、変わってない。
天然で、人を温めてやる事のできる奴。
その背を見送る。
「ボーっとしてどうした、」
わっ!!
「きゅ、急に声かけないでよ、…って何?鏡夜も帰るの?」
「あぁ、世話になったな」
鏡夜が靴をはく。
「ちゃんっ!僕等も失礼するよ〜」
「先輩たちも?」
「うんっ、久しぶりにうちにもおいでよ〜、みんな喜ぶからー」
にこっと花散らして光邦が言ってくれた。
「ありがと、そのうち挨拶に行くよ、光邦」
あたしが言うと、崇がフと笑ってくれた気がした。
それじゃ、と3人は玄関を出ようとする。
その時、鏡夜だけが振りかえって一言。
「例のケーキは1年で分けろよ」
「きょ、鏡夜!!!???」
ま、待て――――――――!!!!!?????
止める間もなく、ドアは閉まり、茫然とあたしは佇むのみ。
あのキムチケーキの恩恵にあずかれるというワケですか、幸せ者のあたし♪
ってバカか!!
「姫?」
あたしが振り向くとそこには“馨”が立っていた。
NEXT STORY!