【桜蘭高校ホスト部】





「「ちゃ〜ん」」



キモイな。←酷。



双子の発言に、あたしはそう突っ込んだ(心中で)




あたしを『ちゃん付け』して良いのは、可愛い人だけだ。←力説。




「なぁに?」


昨日から桜蘭高校の超Aクラスの生徒が集まるホスト部の部員が、あたしのマンション部屋に。








あたしの超狭っっっっいマンションの一室に集まりになられておはせられる。←何。







昨日から自由にご飯。


自由にゲーム。


自由に風呂・トイレ。←それは仕方無いだろ。




とにかく自由に過ごしていらっしゃるのだ。




「でね、姫」(馨)



あたしはどうやら双子にあまり気に入られてはないらしい。


男装してホスト部にもぐりこむあたしを、厭味を込めて『姫』と呼ぶ。



「ハイ、何でしょう」


こんな時はロクな事が無い。


これは鏡夜やハニー・モリ両先輩と付き合ってできた免疫みたいなものだ。


「「今日が何の日か知ってる?」」(双子)


は?


今日は…。


「ロックの日?」

6月9日よね。






「ヒネリが無い、失格」(光)










ミシっ。










光の言葉に、あたしは思わず青筋を浮かべてしまった。


ちゃんの頭にヒビが入っちゃったよ〜、崇、どうしよ〜」


オロオロとするハニー先輩。


…」


崇があたしの肩に手を置く。


「フフフ、大丈夫よ、崇」


ガラっとハニー先輩の表情が変わったのを、あたしは見逃さなかった。


だが、別に構う程の事でもない。




「「何の日でしょ〜?」」(双子)




声をそろえて言われても、知らないのですが。





チラリと辺りの様子をうかがって見る。


ハルヒ・環…―→ゲーム中。

ハニー先輩・崇…―→混乱中。

双子…―→ニヤニヤ。

鏡夜…―→こいつだけには自ら頼むのはイケすかない。
















フッ。敵ばかりだ。

















「ん〜…?」


曖昧に笑って、あたしは朝食の片付けを始めた。


「ちょっと聞いてる〜?」(光)

「俺たちの話〜」(馨)

「聞いてる、聞いてる」

「「だから、今日は何の「誕生日でしょう?」…」」


あたしの言葉に面食らう2人。


「知ってたの?」(光)

「まさかぁ」



知ってたらもっと早くに言って、うるさくさせなかったわよ。


「それ以外に思い浮かばなかっただけよ」


平然と言い、あたしは皿を洗う。


それがつまらなかったのか、双子は拗ねたように顔を見合す。


「じゃぁさ、ね?」(光)







…じゃぁって何だ!!???







どんな文脈で『じゃぁ』なんスか!!



てか、ね?って言われても。









困ります!!









つまり、パーティーを催せって事か?





そんなん。





「家帰ってやれよ!!」


「「飽きた」」(双子)





コノヤロウ…。









どうしたらそこまで自由に生きられるんだ!!??







「ったく…」





あたしは食器を片付け終わると、電話をとった。



「「一味違うパーティー期待してるよ」」(双子)



お、お前等…。



あたしは受話器を握り締めた。


落ちつけ、落ちつけ。








落ちつくんだ!!!!









何処までも自由なコイツ等の発言に付き合っていられるか!








でもさ、パーティーの主催なんてした事無いから勝手が判らない。







…手伝おうか」


見かねてか、鏡夜が声をかけてくれた。










天の助け!!!!










助けを乞うのは御免だが、向こうからなら仕方無い。←何。




「お願い!」

「まったく」

溜め息まじりの鏡夜。


それはこっちのセリフだ。


てきぱきと鏡夜は何処かへ3回ほど電話をかけ、「整ったぞ」と言った。


「慣れてるわね…」

「まぁな、職業病という奴だ」

「何よそれは」

苦笑まじりにあたしは言う。

「お前こそ、料理ちゃんとできるんだな」

「まぁ…それなりにはね」



「おいしかったぞ」


社交辞令であろう労いの言葉。


「…ありがとう」

「それにしても、知らないって言うのは恐ろしい事だな」

今度は鏡夜が苦笑を洩らす。


何がよ?


「お前が『東宮』のご令嬢だって事をさ」

「あぁ、あの双子?」

「本能で『イイトコ』のお嬢様ってのは分かってるみたいだがな」

「…分かってたら来なかったかしら…」

「それは無いな」

「でしょうね…」


桜蘭に入ってから、自分の溜め息と脱力する事が増えた気がする。


まぁ前から周りに振り回され気味なところもあったが、激増した。


「まぁ、それはそれで退屈しないからいいだろう?」

「そりゃ鏡夜は良いでしょうよ…」


遠い目。




「たまちゃん、また負けた〜」


笑い声にあたしはそちらに視線を向けた。


大型のプラズマテレビの前に座った自由人たち。


「だって殿弱過ぎ〜」(光)

「そうそう、すぐ罠にひっかかるしさ」(馨)

「な、何を!?お前達はもっと正々堂々と勝負できないのか!!」(環)

「「だって正々堂々とやるゲームじゃないもん、これ」」(双子)



まったくもって其の通り。



ホスト部(自由部)の御人たちがやられているのは某レースゲーム『マ○オカー○』。


「むぅっ。じゃ、じゃぁハルヒ!!ハニー先輩!勝負しましょう!!」(環)

「ちょっと殿!それ卑怯じゃない?」(光)

「何を言うか!ハルヒもも立派なホスト部一員!レースには参加すべきだ!」(環)

「やるやる〜」(ハニー)

「まぁ自分は別に良いですけど」(ハルヒ)

チラリ、とあたしの方を見る環。



分かった、分かったから。



「…断る理由は無いんで」


そう言い、コントローラーを握った。


「「スタート!!」」


『マ○オカー○』は様々な罠を仕掛けたりして、相手を落とし入れるレースだ。


別に何の難しい事は無い。


だが。


「「ゴール!!」」





…。








て言うか、環バカでしょ。←酷。


「環ってゲーム音痴」


あたしの言葉に環が泣き出す。


「だってだって!あんな所にバナナの皮とか…」(環)

「避ければ良いじゃないですか」(ハルヒ)

「うっ」(環)

「たまちゃんヘタっぴ〜」(ハニー)

「「本ッ当単純なんだから」」(双子)


順位は1位あたし、2位ハニー先輩、3位ハルヒ、ケツ環。


「ただ単に人選ミスだろう、環」(鏡夜)

「お母さん…」(環)

「…俺だったらまずは選ばない」(鏡夜)

「な、何故だ!?」(環)

「ここは誰の家だ?そしてそのゲームは誰の物だ?だろう?

 誰よりも慣れていると考えるのが普通だ」(鏡夜)

「はっ!!そうか!!」(環)


それでも鏡夜には勝つ自信無いですよ、あたし…。








ジャンプした着地点にバナナとか仕掛ける人でしょ。








ピンポーン!





誰が来たんだろ?


「…来たようだな」


鏡夜がドアの方へ歩いていくのを、あたしは後から追いかける。


「な」


な、な、何よこれぇ!?


「ケーキだが?」


鏡夜、そんなしれっと言わないでくれる?


「赤いんですけれども…」

「まぁ、生クリームの変わりにキムチがコーティングされているからな」

「…ケーキですよね」


「キムチケーキだ」


…ガ○トじゃないんですから、鏡夜お坊ちゃん。


「一味違った、を御求めだろう?あの常陸院御兄弟は」







メガネが逆光で眩しいよっっっ!!






日光入ってきてない筈ですよね?





この果て無き黒にはもう何も言うまい…。




「あのさ、ここ任せて良い?」

「何故だ?」

「パーティーでしょ?料理作らないと…どう考えても足りないし…」


あたしは考え込むように言い、部屋へ歩き出す。


「何だ、そんな事か。料理など頼めば良いじゃないか」

「…全て手作り、しかも素人の。ってのも、また一味違うし…こうゆーの知った方が良いと思うのよ」


あんたたちはね。


「そうか?」

「まぁ任せなさい」


じゃぁ行きますか。


ちゃん?何処行くの?」


ドアに手をかけた所で、ハニー先輩に声をかけられた。


「はぁ…ちょっとスーパーに」

「僕も行く〜」

「え?別に良いですよ、ゆっくりしててください」

「僕が行きたいだけだから、良いのっ」


この人は…。








あんたを連れて行くと大騒ぎになるからヤなの!!









でも、ここで断るのも騒ぎになる気がする。


言い出したら聞かないのは、昔からだ。



「分かりました、一緒に行きましょう」

「やったぁ〜」


花散らしちゃって。


「光邦、俺も一緒に…」

「崇はいーのっ」

「でも」


崇は言い募る。


だが。


と2人が良いんだ」


キッパリ。


ちょっとブラックハニーが見えましたよ!?


「…分かった」


崇、待って!!


2人っきりは怖いのですが!!


「え、え、ちょっと!やっぱり崇も一緒に行かな








ヒィ――――!!!








ちゃんも2人で行きたいよねっ!」


ヒィ―――!!


「ハイ☆(爽笑)」

















世にも恐ろしい黒笑を見てしまった…。

















心の中は汗水タラ――――――リですよ!!!!















「良かったっ♪じゃぁ行こっか」


素晴らしい笑顔で言われましたけど。
















ハニー先輩のそれは…最大にして最強、そして最恐の武器ではないか!!!!



















それを見た者は、彼に従わざるを得ない。









ははは…。







「じゃぁ行きましょうか」


























今夜は絶対悪夢だ。






























NEXT STORY!





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双子との話は次の次に持ちこしです。

すみません↓。