【PEACE MAKER】   例えばこんな逸話 THE THIRD STORY





「るぴん?」


何だァそりゃ、と土方歳三(副長)が盛大に眉を寄せた。


「えー?土方サン知らないんですかー??」

「だから何だっつってんだろ」

「怪盗ですよ、巷を騒がしている」

「土方サンってば本当疎いんですから」

「…俺だけじゃねぇだろ、別に」

「いえ、皆さん知っていると思いますよ、ねぇ?」


ここは副長室、土方の自室だ。

そこに座すのは(二番隊所属)と沖田総司(一番隊長)だ。



「そうですねぇ、だって届いてましたもん。予告状



ぺらっとは一枚の紙を眺める。









         〜   第一夜   Notice × Distraction   〜










「ア?それで何て書いてあんだよ?」


その言葉に、良いのか?と総司に目配せをする。

総司はぷっと笑いながらウンウン、と首を縦に振った。


(…絶対楽しんでるよ、この人…)


は呆れの視線を総司に送りながらも、口を開く。



「“今宵屋敷在中の豊玉、戴きに参ず”」



はゆっくりと抑揚の無い声で読み上げた。





「な、なッ!!!???」





煙管を口から取り落とすと、土方は肩をわなわなと震わせた。


お約束どおり爆笑する総司。

だから言ったのに、と呆れる



「み、見せっ」


「はいはい」


ほとんど言葉を喋れていない土方に、が紙を手渡す。





「な、な、な、、、




 何じゃこりゃァ――――――――――――――――ッッッ!!!!!!」






「ふ、副長うるさい…」

が耳をふさぎつつ、非難する。

しかしそれが土方に届くはずも無く。

激しく顔の崩れている土方を指差して爆笑している総司に一瞬うらむような視線を送る。


(総司〜〜〜〜!!)


取り敢えず紙を畳の上に置き、それに覆いかぶさるように項垂れる土方。


黙りこくっている。


響くのは総司の笑い声のみだ。




「総司…」

「あははは…て、何ですか、土方サン」


笑いを邪魔されたせいか、総司の声は不機嫌そう。


(あんたは副長に笑わせてもらってるんだろうが!!)









「各副長助勤を集めろ、すぐにだ!!」










それはすでに怒号だった。


(やれやれ、これだから厭だったのに)







は肩を落としながらため息をついた。







そもそも事の次第は何なのか?


それは数刻前に遡る…。




トンっ!


軽快な音がして、ここ、新撰組屯所の門に矢が刺さった。

「な、何だこれは!!」

見張りの隊士が慌てて矢を抜く。

「こ、これは…ッ!!!す、すぐに報告を!」

隊士がバッと後ろを振り返るとちょうどそこには藤堂平助(八番隊長)の姿。


「と、藤堂先生!!」


慌てた隊士の態度に、少々面食らったが平助は立ち止まった。


「どーしたの、そんなに慌てて」

平助はこれから隊務の様で、隊服を羽織っている。

は普段着だ。

今日の巡察は八番隊らしい。

「こ、これを…」

差し出されたのは、紙が結び付けられている矢。

「こ、これは…」

それを手に取り愕然とする平助。




「矢文ね」




しれっと冷静にが呟く。


「ちょっと!!俺がこう衝撃的な反応取ってるんだから乗ってきてよ!!」


俺寂しいじゃん!!と平助がに泣きつく。


「やり直し!!」

「は?」


が怪訝な顔をするのも無視して、平助はゴホンと咳払いを1つ。


「こ、これは…!!」

「矢文ね」


「…………!!!」


がっくりと項垂れる平助を横目に、は紙を手に取る。


その文面を見て、の手がピクリと動いた。


一瞬の仕草、それもめざとく見逃さないのが平助だ。


「何?どうしたの??」

「…矢文とは…何と古めかしい!!

…!今、その反応は絶対間違ってるよ…!!俺、泣けてきたッ!」

「なァんであんたが泣くのよ」

「わーん、漫才師4号が反抗期だよ、新八っつぁーん!!」

「…呼んでもこないから…て言うか、いつの間にあたしは漫才師になったよ?」


わんわんと嘘泣きをする平助をなだめつつ、は紙をしまった。


「平助ぇー早く行かないと巡察に遅れるよ?」

「あ、そだ!!じゃ、また後でな!」

「うん、いってらっしゃい」


手を振りながら去っていく平助の後姿を見ながら、はう〜んと唸る。


「どうかしたんですか?

「あ、総司。ちょっとコレ見てよ」

「はいはい、え〜っと、何々…?」


しばらくの間。


それから、思い出したかのような笑い声。


「あっはっはっは!な、何です、コレ!!」

「矢文よ」

「そうじゃなくて、豊玉って…」

「十中八九、土方副長のアレよね…」


の呟きに、総司は笑い涙まで浮かべている。


アレでしょうね。あーおっかしい!!お腹が捩れちゃいますよォ」

「あんなの盗んでどーすんのかしらね」

がうーんと唸る。

まだ笑っている総司。



「あ、あの〜…」


まだいた見張りの隊士がおずおずと口を開いた。


「あ、あぁ、行っていいよ、ありがと」

「なんだったんですか…?」


興味ありげに隊士が尋ねる。


「コレ?コレは…」

「コレは予告状ですよ…巷で噂の…盗人の」

が言いよどんでいると総司が続きをケロリと言った。

「あ、あのですか!!??」

血相を変える隊士。

当然だ。

この矢文の送り主である巷で噂の盗人は、大きな屋敷から高価な美術品などを盗んでいる。

誰も殺さず、ただ美術品だけをいただいていく盗人。

予告状を出しては、その通りに実行する。

勿論、それを捕らえた者は誰一人といない。

京の町を騒がす、盗人だ。


その高価な美術品ばかりを狙うはずの盗人が、なぜ…



「土方サンの句集も有名になりましたねェ!」



私のおかげですか、と笑いの収まらない総司を尻目に、は。


(厄介なことに巻き込まれなきゃ良いけど…)


面倒くさいのは御免だわ。と1人虚空を見上げた。





池田屋から1週間。


祇園祭から1週間。


町は、盗人の噂で持ちきり。


ここに新たな物語が始まる。



さァて、土方は無事句集を守れるのか!!??

それとも恥(失礼なっ!!)を世間に振り撒いてしまうのか!!??




次項。


〜   第二夜    作戦と思惑   〜




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始まりました、例えばこんな逸話 THE THIRD STORY!!

完全オリジナルストーリーでお送りいたします。

と言っても、原作沿いだったのはSECOND STORYのみですがw

とにかく今回の物語は…とにかくギャグメイン。

面白さを重視して書いていきたい…な?と思います。←決意弱ーっ。

それでは、お付き合いのほどよろしくおねがいします。