【PEACE MAKER】 例えばこんな逸話 THE THIRD STORY
「新八」
はある部屋の前に立ち、声をかけた。
「ん〜?」
のんびりとしたいつもの調子で永倉新八(二番隊長)が出てきた。
「副長がお呼び」
「え〜?何なのヨ?」
「大事件よ、池田屋以来のね」
片目をつぶって、は肩をすくめて見せた。
「??」
新八はただ眉を寄せるばかり。
〜 第二夜 Operation × Venture 〜
「集まりましたよ、土方サン」
副長室、そこに座すのは土方始め数人の幹部。
「ア?これだけか?」
盛大に眉を寄せ、不機嫌そうに土方が言った。
「ハイ、今空いているのはこの7人だけです」
「そうか、空いているのは…じゃないだろ!!今は緊急事態なんだぞ!!!!」
(それはあんただけだよ!)
は6人、つまり沖田総司、永倉新八、藤堂平助、
原田佐之助(十番隊長)、斉藤一(三番隊長)、山崎烝(監察方)とともに
土方に向かって座っている。
「副長、どういう事態なんですか?」
神妙な面持ちで新八がたずねる。
誰かがゴクリと息を呑むのが伝わる。
(場違いさに笑えてくるわ…)
は独り心中で自嘲する。
「永倉、何も訊くな」
「は?」
「何も訊かずに…俺の部屋を警備してくれ」
「「「は???」」」
辛辣な土方の表情、きょとんとしたのは勿論三バカ。
「な、何スか、それ??」
平助が取り敢えず口を開いた。
「今夜、この屯所に忍び込むと予告が届いたんですよ」
「そ、総司!!」
慌てたように、土方が総司の口を手で塞ぐ。
「むぐぐぐぐ…」
それでもなお笑顔で喋ろうとする総司だが、土方がそれを許さない。
が。
ギロっ!!!!!
「ひ、ひぃ!!」
(い、今副長が「ひぃ」って…!!)
その通り、土方が青ざめながら「ひぃ」っと言い、手を離した。
長い髪の影になって分からなかったが、総司が何かしたに違いない…。
「ってな訳で、みなさん適当に土方サンを守ってくださいねっ★」
(((て、適当に!!??)))
も新八も、平助も佐之も同じことを思っていた。
「今宵、近藤さんと山南は留守だ。全権は俺が執る」
土方の言葉に、全員が黙る。
「侵入者は誰一人として逃がすな」
土方が目配せすると代わりに総司が口を開く。
「えー、相手は神出鬼没の怪盗です。表を固めるだけでは無駄でしょう。
表は手薄にして、中を固めましょう。
ここにいる7人が頼りです。土方サンの部屋の前に3人、中に2人、それから屋根に2人」
「でも、思うんだけどさ」
総司の言葉にが口を出す。
「副長室の前に3人も人を立たせていたら、そこにソレがあるってバレバレじゃない?」
「そういえばそうだネ」
「でも手薄にしたらまずいっしょ」
議論は堂々巡りを繰り返す。
「まァバレたとしても阻止すれば良いだけの話ですから」
総司の言葉に全員がうなづく。
その様子を見て、土方が筆を取り出す。
「上は勿論山崎くん、それから、頼む」
「分かりました」 「りょうかーい」
「中は総司、それから斉藤」
「はい」 「御意」
「外は残りの三人で頼む」
「「「はい」」」
はふと首を傾げる。
「副長、捕まれば良いのなら屯所中を上げて隊士も動員すれば良いのでは?」
「そうっスよ、人は多いほうがいいですし」
の言葉に平助も賛同する。
「ダメだ、こんな訳の分からない奴のためにそれはできない」
「…腑に落ちないなァ…」
ぼそり、と新八が呟いたが土方の耳には届かなかった。
「お前等が頼りだ、よろしく頼む」
命を言い渡され、全員の背筋が伸びる。
(こんな下らないことに労力を使わされるとは…)
はやれやれと心中で呆れ、総司は楽しそうに笑みを浮かべた。
他の三人は首を傾げ、一は無表情だ。
「夕刻まで時間はある、時が来るまで自由にしていろ」
副長室から出る。
「副長…何であんなに慌ててんだ?」
「何か、隠してるネ」
「面白い、何かを」
(三バカって結構頭良いんですよ、土方さん…)
いくら急を要するとは言え、人選を間違えたと思う。
「でも誰が侵入するってのサ?今夜」
「怪盗だよ、噂の」
の言葉に、三人が「えっ!?」と言う。
「な、何よ」
「あの超絶美人な!!??」
平助の言葉にも目を見開く。
「そうなの?」
「怪盗って野郎だろ?」
「え、俺女って聞いたぜ?」
「…男デショ」
「男女かなァ…」
「うわっ、!!それ超笑えない冗談!!」
「結構本気だったんだけど」
う〜ん、と唸る4人。
「姿形が分かんなきゃ、警備の仕様が無いよネ」
「ホントホント」
「でも絶対に失敗しない、って事以外謎なんでしょう?」
「まァ、そうだネ…でも今夜ココに来るなら」
新八が悪戯っぽくにやりと笑う。
「確かめれるんじゃない?」
俄然やる気になった3人。
捕まえる目的は土方の為ではなく、自分の興味の為、という事になった。
「飛んで火に入る夏の虫ってヤツだな」
「おー佐之、そんな言葉知ってたんだ。すごいすごい」
「だろー」
がっはっは、と豪快に笑う佐之。
が、の台詞は抑揚の無い棒読み状態。
「新八っつぁん…」
「何だ、平助」
「俺、ちゃんが怖いんだけどっ…」
「安心しろ、俺もだヨ…」
「そこ、何コソコソやってンの?」
にこーり、の素敵笑顔のあまりの眩しさに2人は思わず後ずさった。
「ってば絶対怒ってるよね…」
「だってこんな面倒なコト…は大っ嫌いなんだから…」
遠い目をしながら新八と平助は呟いた。
(何であたしの休日を土方副長のために使わなきゃなんないのさ)
文字通り、の機嫌はものすごく悪かった…。
次項。
〜 第三夜 混乱と遭遇 〜
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何だろう、この展開。
本当になんだろう…ギャグともつかない文章…殴。
次はやっと登場します、怪盗るぴん。(何