【PEACE MAKER】   例えばこんな逸話 THE THIRD STORY






「捕まえたわよ」


は肩で息をしながら、目の前の鉄之助を睨んだ。


ここは袋小路、逃げられやしない。


(だが屋根に上った)


身軽なのだろう。壁を越えて行く可能性も捨てきれない。


月光が明るいせいか、姿が良く分かる。


それは間違いなく“鉄之助”だ。


その“鉄之助”の口が三日月にゆがんだ。


「なッ!?」


は目を疑った。


べりっ…べりべり…


そんな、普通では聞かないような音を出して“鉄之助”は自分の顔の皮を剥いだ。













         〜   第四夜   Confront × Identity   〜












「ウソ…でしょう…?」


の絶望的な声が響いた。


月光に映し出されたのは、白い肌に金髪。


背丈は勿論鉄之助と変わらない。


(噂の怪盗が…異人だったなんて!!)


は愕然と、ただその光景を見つめていた。


しかし。








「ッ!!!!」








異様な気配を感じ、はするっと着物の袖口からクナイを取り出す。



バッ!!!



着物を翻し、振り返って気配の主へクナイを突きつけた。


ガチャ。


(う、うそぉ…)


の背後にいた人物。



眩いばかりの金髪に、青い目。



背丈はよりはるかに高い。



「オジョーサン、こんな夜中に何してんの?」



流暢な日本語。


冷たいモノが、の背中を伝う。


なぜなら、が相手にクナイを突きつけているのと同様に、相手もに銃を突きつけているのだ。


ぎっと相手を睨む


「あんたこそ…こんなトコ(日本)で何してんのよ」


「それは言えないなァ…」


あはは、と明るく笑う。

その時、後ろに追い詰めていた“偽鉄之助”の気配が消える。


「っ!!」


慌てて振り向こうとして、その腕をつかまれた。


「…離しなさいよ」

「厭だね」

「離せ、この変態。大声上げても良いんだぞ、この野郎」

「…口が悪いね、もう少し女らしくなったらどう」

「余計な、お世話よ」


の眸の色が変わる。


完全に認識した。



(こいつは、敵だ)



つかまれている腕を逆手に取り、ぐるんっと後ろに回る。


ぎりぎりと、相手の腕を締め上げている…つもりだった。


(何コイツ…!!)


折れそうなほどに力を入れているというのに、顔色1つ変えやしない。


「いけないなァ、この国の女性は大人しい方が好まれるんでしょ?」


言われたとたんに、相手の腕が肩から“外れた”


「な…に…!!??」


驚愕、それ以外にこの感情を説明することができない。


「そんなに驚いてどうしたの?…あぁ、そうか、この国にはまだこんなモノ無いんだったね」


腕が“外れた”ってのに、明るく笑みまで浮かべる奴。


は刀に手をかけた。


(体術がダメなら斬り捨てるまで…!!)



「あんた本当に変体だね」


言って、が地を蹴る。


「女の子がそんなモノ振り回しちゃダメでしょ」


そんな言葉には耳を貸さない。


まずは上段から、刀を振り下ろす。


相手はすいっと横に避けた、が、もそこまで甘くない。

刀の軌道を変えると、相手の腕に刀を押し当てた。


ザンっ、相手の着物が裂け血が舞う。


「!?」


一瞬、相手が息を呑むのが分かった。


「オジョーサン、ちょっと付き合ってもらうよ」


打って変わって真剣な声。


だが、すでに相手はの間合いにいる。


(殺れる)


そう思った、だが、次の瞬間。


「っん!?」


白い布のようなもので口と鼻を塞がれたと思うと、の視界と意識は暗闇に落ちた。









「何処行ったんや…!?」


烝は焦る気持ちを抑え、駆けた。


「山崎っ!」

「永倉さん!」


小路で出会った新八と、烝は走りながら言葉を交わす。


「どう見えた?」

「俺には市村に見えましたけど…」

「だけどビックリ、市村鉄之助クンは部屋に居たんだななーコレが」

「はァ!?何です、それは…」

「ところで山崎くん、は?」

「それが…」


烝は新八に挟み撃ちにするために分かれたことを伝えた。


「そう…とにかく探そう、何か…厭な予感がする!!」


その時。



ダァン!!!



大きな音、聞いた事の無い破裂音。


「な、何だ!?」

「行ってみましょう!!」


2人はとにかく、音のした方へ走った。









次項。


〜   第五夜    血痕と焦り   〜




■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

ギャグ何処行った――――!!!