【PEACE MAKER】 例えばこんな逸話 THE THIRD STORY
「…な…?」
そこにあったのは、薄紫色の羽織。
ところどころに血が…付いている。
地面にも、少量だが血溜りができている。
「…ウソ…デショ…?」
これは、が今日、着ていた物だ。
自然と、2人は同じ結論に到達する。
(に何かあったんだ――――……!!!!)
どうしようもない焦りと、不安が心を支配しだしていた。
〜 第五夜 Bloodstain × Fear 〜
「取り敢えず、屯所に戻ろう」
押し殺したような新八の声。
「はい」
烝はそれだけしか言えなかった。
(俺のせいや…!!)
ぐっと拳を握る。
その後、2人は無言で屯所に戻った。
「おうっ!新八どうだった!?」
佐之の声に、新八は顔を上げるもその顔は無表情。
「な、何かあったのかよ…?」
「副長は?」
「あ、あぁ…中だけど」
平助たちもだ、と佐之は続けた。
その普通ではない雰囲気に圧されたのか、佐之は黙って先を歩いた。
「永倉か…どうだった」
「恐らく、奴が立ち寄った最後の場所までは突き止めました」
「そんなことは訊いてねぇ、捕らえたか、どうかを訊いてんだ」
「捕らえ、られませんでした」
ちッ、そう舌打ちする土方の態度が新八の気に障った。
「これだけ集まってこのザマか、情けねぇな、オイ」
「副長」
「何だ」
「その、最後に立ち寄ったと思しき場所にコレが落ちていました」
新八が取り出したのは、さっきの血染めの羽織。
「なッ!!??」
真っ先に声を上げたのは総司。
「これ、のじゃねーか!!??」
「ご名答」
「な、何を落ち着いているんです!?山崎サン、一緒に居たんじゃないんですか!?」
「すみません、途中で分かれてしまって…」
土方の表情がだんだん険しくなる。
「見事にしてやられたんですヨ、あのコソ泥に」
新八の抑揚の無い冷たい声が、耳に刺さった。
血が付いてるってことは、少なくとも戦闘があったってことだ。
新八は羽織を握り締めつつ、考え込んだ。
(の血…なノ?)
羽織に視線を落とし、自分の不甲斐無さを呪った。
「、さらわれちゃったのかな!!??」
平助の声に誰もが口を噤んだ。
「で、でも、あのが…」
「そうですよ、あのが」
総司と佐之がかわるがわるに言った。
「じゃぁ何で戻ってこねぇんだ」
副長が更に言い放つ。
「ギャ――――!!が誘拐されちゃった――――!!!」
「っっっうっるせぇぞ、藤堂!!」
平助の叫びに副長がつっこむ。
「でもどうするんです、土方サン!
土方サンの句集ならまだしも、を盗まれるなんて…!!
計算外でした…」
「そ、総司…!」
(今ものすごく黒いコト言いましたヨ、この人)
新八は羽織を見ながら尚も思考を巡らす。
「え、土方副長の盗まれたものって…句集だったんですか?」
きょとんと平助が、誰もが思っていてつっこまなかった事をさらりと訊いてのけた。
「…」
ぐっと言葉に詰まる副長。
「そうですよ、土方サンの下らない句集のせいでが…」
「そ、総司、下らないとは何だ!」
「違うんですか…?」
目を細め、副長を睨む総司。
(く、黒――――!!黒いヨ、総司)
新八は心の中でつっこんだ。
どうやら落ち着いて余裕が出てきたらしい。
「でも本当、どーすんだ?を取り返さなきゃなんねーだろ、
副長の句集は置いといて」
佐之が更に追い討ちをかける。
「置いておくな!!」
「土方サン…あなたはより句集の方が大切なんですか…?」
いい加減にしてください、と総司が睨む。
話は堂々巡りを繰り返すのみ。
見かねてか、新八は口を開く。
「きっとまだあのコソ泥と接触する機会はあるはずデス、
居城を突き止め探るよりも、次の犯行予告を待ったほうが手っ取り早いかもしれませんねェ」
「確かに…それからねぐらを突き止めて、を助け出すほうが…」
「そうなると、次の犯行予告の情報を掴まなきゃならねぇ」
「巡察の時にでも探ってみますヨ」
うーむ、と難しそうな顔で唸っていた副長は、首を縦に振った。
(…無事でいてくれヨ…)
新八は羽織を握り締めた。
次項。
〜 第六夜 本性と行方 〜
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副長が可哀想!!←泣きながら。
何だかスランプかも知れません…遠い目。