【PEACE MAKER】   Slapstick  〜School〜




天気は快晴。

本日は新撰学園球技大会であります。







「てめぇ等、気を抜くんじゃねぇぞ。勝利だ、勝利にこそ意味がある!!

 負けやがったら明日の朝日は拝めねぇと思え!!」








どこまで俺様ワールドを広げるつもりですか、土方先生。








「きゃーっ♪ひ・じ・か・た・先生素敵ィ―――――ッ!!」






あ、顔が崩れた。








【黒い影が憑いている…。】








伊東先生の脅威の声援を受けた土方は固まっている。


(…差し詰め天敵って事か)


は無表情でそんなことを思いながら、となりの沙夜を見た。



(緊張してるのかな?)



と同じ様に、沙夜はバスケになった。

友人の花とは競技が分かれてしまったらしい。

こういうところを考慮しない奴等はどうかと思う。


「沙夜?大丈夫?」

「え、うん…」


もともとスポーツが得意そうな方じゃない。

(何とか補佐してあげられるといいけど)

はそんなことを頭の片隅で思いながら、周りを見渡した。





「あんた等!えぇか!?よう聞くんやで!!勝ち負けなんて気にせんでえぇねん!

 気張ってやりぃ!そうしたら自然と結果は付いてくるもんなんや!!」





聞き覚えのある関西弁。


はその人の顔を見てギョッとした。


(烝!?)


そんなはずない、烝より髪が長く何よりあの人は女だ。


でも似ている。



「姉弟だ」



「あ、そうなんだ…って、斉藤くん!?」


「久しぶりの出番だな」


(何の話ですか―――――!!??)

は取り敢えず心中だけでつっこんだ。


「なな、ッ」

「なぁに、鉄っちゃん」

「絶対俺の試合観に来てくれよなっ!!」





(あったりまえさ―――――☆★☆★)





にかっと元気な笑顔を向けてくる鉄之助。


「うん、行くよ」

「やりぃ!俺もの試合、ぜってー観てっかんな!!勝てよ!!」







あなたの心にスラムダァ――――――ンク!!!!(何言ってんだ)







どこまで逝く気ですか、







(ぜってぇ勝つ)







のやる気メーター振り切りました。



「沙夜も頑張れよっ」

「う、うん…」


照れながら、と言うかの後ろに隠れながら沙夜は返事を返した。


(はっは〜ん♪)


は意地悪く笑む。



(お沙夜は鉄っちゃんのことが好きでおじゃるな?)



誰だお前。


と、ツッコミはこの辺にしておいて、話を進めるとしよう。





「あたしたちはAコート第3試合目か…」


は対戦表を見上げながら呟いた。


「がんばろーね、沙夜」

「う、うん…」


総当り戦なので、学年別で4試合行う。

バスケは得点制ではないので、きっちり1時間ちょい暇ができるわけだ。


「鉄っちゃんは何試合目?」

「俺は1試合目、斉藤とのダブルス〜」

「さ!!」




(斉藤くんとダブルスですか―――――!!??)




は対戦表を見上げたまま、心の中で叫んだ。


「俺が相手では不満か?」


「さ!!」


急に声をかけられて、はばくばくと鳴る心臓を押さえた。


一はいつもどおりの表情で、身にはジャージ。



(果てし無く似合わない…!!)



、お前さっきから「さ」しか言ってねーじゃん!」



豪快に爆笑しながら鉄之助がの背をバシバシと叩く。



「だ、だって…斉藤くん、いつからそこに?」

「俺はさっきからずっといたが」

「…あたしが気づかなかっただけですね」

「そのようだ」





斉藤さん…悲しそうな表情をするのはやめてください。





〜、ひどいぞー?斉藤は傷付きやすいんだからなッ!!」





(あんた何言ってんだァ!!)





ごめんなさい、あたし市村くんの事誤解していました。←そっち!?



はとにかく動揺が伝わらないように頑張った。


「市村、そういう事は言うな」

「何照れてんだよ〜」


お前等、いつの間にそんなフレンドリーになったんだ?

て言うか、何かお前等の会話おかしくないか!?


(この二人の組み合わせってなんかやばい気がするわ…)


「ご、ごめん…あたしもう行くから…」


手で頭を押さえながら、はその場を去ろうとした。


ッ!ぜってぇ見に来いよな!!」


…。

ある種の邪悪さをも感じます、その元気な萌笑顔。


「…はい」


取り敢えずは返事を返し、本部を後にした。

後ろから沙夜がついてきた。


「花ってバレーだったよね、たしか第2試合目…見に行く?」

は沙夜に首を傾げて言った。

こくん、と首を縦に振るのを確かめてはにこりと笑う。

照れたのか、顔をそらされてしまった。


さんっ!」


後ろから声をかけられて、は振り返る。

「あ〜、沖田先輩!」


(沖田先輩のジャージ姿新鮮〜)


何というか、可愛い。

とてとてとて、と軽やかに走りよってくる。


さんは競技なんですか?」

「あたしはバスケです、沖田先輩は?」

「私は卓球なんです〜」


(剣道部の卓球率高いな…)

は内心そう思いながら、フと横を見る。

やはりと言うか、沙夜はの後ろに隠れて照れくさそうにしている。

(こっちも可愛い…)

なんて思いつつ、は総司に視線を移した。


「何試合目ですか?」

「私ですか?えーっと…たしか第2試合目でしたよ、これから行くところです」

「そうなんですか!頑張ってくださいね」


がにこりと笑うと、総司も嬉しそうに笑んだ。


「はい、さんこそ」


そう言って総司は卓球会場に向かった。

その背を見送る。

(そういえば新八は競技、何なんだろう?)

聞いてなかった、とは首をかしげた。

ちょいちょいとジャージの裾を引っ張られる。

(?)

何かと思い後ろを向くと、沙夜が卓球場へ行こうと指を指していた。


「あ、そっか鉄っちゃんの試合見に行かなくちゃね」


沙夜が嬉しそうに笑んで、もつられて笑った。






卓球Bコート、第一試合、市村・斉藤ペア(B組)VS樋口・三浦ペア(A組)






「鉄っちゃん、頑張って!!」

の声が響く。

それに反応して鉄之助がのほうを見た。

!!沙夜!!観てろよー!!」

「おーッ!!」

が叫んで、沙夜が手を振った。

それが沙夜の精一杯らしい。



中々、鉄之助は卓球が上手い。

まず小回りが利く。

天性の瞬発力。


一は…どうなのか?

的確なサーブ、的確なスマッシュ。

そして…


「次は左だそうだ、市村」

「りょーかいッ!!」



ピィーッ!一点。


「三歩下がれ、市村」

「おっしゃッ!」


敵のスマッシュも難なく返す。



「斉藤!」

「分かっている」


ピィーッ!一点。





「ね、ねぇ…沙夜」

はただ呆然と試合を眺めている。

「分かんない…」

「でしょうね…」


斉藤さん、一体あんたって何者ですか!!??


あっという間に試合終了。


「勝者B組!!」


勝ったのは鉄之助と一のペア。

だけど、このしっくりこない試合だった。





「おぬしたちの卓球は悪くなかったが…どうやら日ごろの行いが悪かったようだ」





一の台詞に対戦相手が眉を寄せる。


事故には気をつけろ」


(な、何の話ですか――――!?)


何気に会話を聞いていた


呆然とも、蒼白ともとれる表情でたたずむ。


そこに鉄之助が駆け寄ってきた。


「斉藤ってばスゲーんだぜ!!次にどっちに球が来るか分かるんだってよッ!!」




きらきらしい笑顔で…そんな不可解なこと言わないでください…!!




「アレには黒い影が憑いている。その影が教えてくれた」


疲れた様子が微塵も見えない一がケロリと言ってのけた。


「そ、それが視える、と…?」


「…まぁそういうことだ」




あんた…!!!





(…鉄っちゃん!沙夜…!助けて!!)





の背中を冷たいモノが流れて、鉄之助と沙夜の方に視線を向けた。




(…)





がある種の不気味さを感じているとき、鉄之助と沙夜はほんわかと会話を楽しんでいましたとさ。



この温度差は何だ!!




あまりの温度差に は寂しくなった。






どうやらこれから数ヶ月間、この不気味な隣の席の住人と学生生活を送らなければならないらしい。








NEXT STORY!!