【PEACE MAKER】 Slapslict 〜School〜
は向きを変えず、鋭い視線だけで男を射る。
(全く最近の男は性根が腐ってて厭になるわね)
はぁ、と小さな溜め息をつく。
ナイフは真っ直ぐ、胸へ向かってきた。
それをスィっと横に避け、その腕を取る。
足を肩幅に開くと、次の瞬間。
ダァン!!!!!!
畳でもないのに、良い音がした。
【女ですか、男ですか。】
「い、一本背負い…」
野次馬の中から呟きが聞こえた。
(…見てるんならケーサツでも何でも呼んでこいっての)
呆れて、はうめく男の上にドカッと座った。
「こっちです!!!」
野次馬をかき分けて現れたのは、警察官と綺麗な顔をした女とも男ともつかない中性的な顔の人。
「き、君…?」
呆然とする警察官に、はケロリと返す。
「あ、被害者の方はそちらです」
「あ、あぁ…」
明らかに当惑している警察官を尻目に、は腰を上げ、野次馬の中を颯爽と去っていく。
しばらく歩く。
「待ってください!!」
?
はくるりと振り向いた。
そこには、さっきの女か男か分からない人が走り寄ってきた。
「何ですか?」
「あ、あの…その、すみませんでした…」
「何故あなたが謝るんです?」
意味が分からない、とは首を傾げる。
だって実際、他の人は呼んでくれなかった警察官を、呼んでくれたじゃないか?
「こっちこそ、ありがとうございます」
ニコリ、と笑っては言う。
本心だ。
「い、いえ!私は何も…」
「でも助かりましたから」
「安心しました」
人懐っこい笑顔でその人は言う。
いい加減、性別が知りたいです。
女で言う所の長めのショートヘアで、声も男にしては高く女にしては低い。
中性的過ぎて、掴めない。
「見事な一本背負いでしたね」
「…ありがとうございます」
照れながら、は一応お礼を口にする。
それでもその人は綺麗に笑ったままだ。
「あなたは…?」
「私?私は…」
何だ、女の人か。
綺麗な人だなぁ…素敵。
がそう納得した時。
「沖田総司っていいます(爽笑」
…男かよ。
は思いきりがっかりした。
(…あたしのときめきを返せ)
相変わらず危ない趣味をお持ちで…。
実際、さきほど男の性根に失望した所だ。
「あたしはです」
「さんですか、可愛い名前ですね」
「…ありがとうございます」
何か照れるな。
はあまりこういうタイプの人と付き合いが無い。
大体は平助か新八といるから、その手のノリの人としかない。
「それにしてもさん、素晴らしい運動神経ですね、柔道、お強いんですか?」
「いえ…ちょっとかじった程度です。沖田さんは?」
「私は剣道を」
「そうなんですか!」
は平助を思い浮かべた。
(全然違うタイプだ…)
と少しおかしくもあった。
と、そこまで考えてはハタととまる。
総司の外見は少し幼くも見えるが、自分と同じくらいでは無いかと思う。
「どうかしましたか?私の顔に何かついてます?」
「…いえ、沖田さんは高校生ですか?」
「そうですけど…さんは?」
「今年から」
「じゃぁ私とは一つ違いですね、私は今年で高2なんです」
まさか年上とは!!!!
は次に新八を思い浮かべた。
(…2つも違うとは)
いやはや、世界とは不思議なモノだ。
「もしかして新学ですか?」
新撰学園、略して新学。
「はい!もしかして、沖田さんも?」
「えぇ!!奇遇ですね!!」
本当恐ろしいぐらい偶然…。
この辺に何校高校があると思う?
それを見事言い当てたんですよ、この人。
には総司の笑顔がちょっと黒く見えてきた。
「それでは、明日。お会いできる事を楽しみにしています♪」
「あ、はい…」
明日からどんな学校生活が始まるのか、少々不安になってきたであった。
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