【PEACE MAKER】   Slapstick  〜School〜



さん、委員会行くで」


カバンに荷物を押し込むと、は席を立った。


「あ、うん。山崎くん…だったよね」

仏頂面の山崎や」


(うわっ、この人すっごい根に持ってるよ…)


が顔を歪めると、烝は気を取りなおして言った。

「あぁ、悪かったな、仏頂面で」

プィっと顔を逸らせて烝は教室のドアの方へ歩いていく。

「すごいね、聴力

「褒められても嬉しゅうない」


(そして素直じゃない)


は烝の後ろについて歩く。

烝の身長はより15cmばかり高い。

それでもの足が速まらないのは。


(歩調合わせてくれてるんだ)


なぁんだ、優しいじゃん。

はくすっと小さく笑った。







【正体不明の仏頂面。】







「そう言えばサ、山崎くんって市村くんと仲良いの?」

「何でや」

「…何でって言われても…さっき話してたし」

「あいつとは中学が同じなんや」

「へぇ、マブダチじゃん」

「マブ…お前それ古ないか?」

「…そう?」

きょとんとは小首を傾げる。

「お前こそ、斉藤…仲良いんか?」

「その前にお前って止めない?」

「じゃぁ何て呼べばえぇねん」

そうねぇ、とは続け。

とか…でも良いけど?」

で」

「何でよ〜、良いんだよ?でも」






「それは勘弁や……永倉さんや藤堂、果ては沖田さんにまで目ェ付けられる






「何よ、それは」

「動き難くなる。…それと、情報は俺には欠かせんもんやさかいな」

「…あんた何者サ」

は呆れてやれやれと首を振った。


「俺の事も山崎か烝でえぇで」

「本当!うれしい、あたし堅苦しいの苦手なんだ!!早速だけど烝、烝って何で関西弁なの?」

「生まれが大阪やからな、中学ん時にこっちに来たんや…あと市村も岐阜からの転校生やってん」



可愛い市村くんの新事実!!



「そうなんだ…で、息投合?」

「そんな筈無いやろ…」

げんなりと烝は肩を落とす。

「ここや、生徒会室」


一つのドアの上には『生徒会室』の文字。


「入るで」

「えぇ、良いわよ」

がちゃっと烝がドアノブを回したとき。




―――!」


ん〜?とが振り向くと、平助が例によってくっついた。


「何!?ってば委員長なの!?」

「あぁ、うん…任命された」

「任命って何さ!?土方先生ってば俺等をそんなに離れさせたいわけ!!」


平助はブレザーの上着を握ってわっさわっさと揺する。


「ちょ、ちょっと平助!!離して、離して!てか、平助も今日から部活でしょう!?」


制服が伸びるっ!とは平助をなだめる。


「そうだけどさっ!」

「だったら問題無いじゃない?…一緒に帰れるし」

「でも〜」

(何が不満なのか?)

は眉を寄せる。

、そろそろ時間ヤバイで」

「あ、あぁごめん、行こうか?ごめんね、平助、またケータイに連絡するから!!」


烝に促がされ、は生徒会室に入った。


(何であんな寂しそうな顔をするのよ…)


平助の浮かない顔が、の頭から離れない。


しかし、次の瞬間。


「おっ1年B組早いねェ」

「新八!」

「やっほー、、どう?ここは」

新八は窓際、ドアから一番遠い席、一際良い席に座っていた。

「良い部屋だね、サボりに最適」

〜?」

冗談冗談、とは笑う。

だけど、周りは冗談ではない。


「永倉くんの事を新八って呼び捨てに!」

「誰、誰よ!?」


それでもは構わない。


1年B組の席、つまり円卓の丁度新八と向かい合う席に座る。


「まだ揃ってないのね」

「そうみたいやな…つか、お前気をつけた方がえぇで?」

烝の言葉に怪訝な顔をしては「何でよ」と応えた。

「永倉さんは去年剣道部主将をつとめ、成績はトップクラス、

 生徒会長選でも立候補が居る中、他薦で選出され他に大差をつけて勝利した人やで?

 生徒会長選は所謂人気投票みたいなモンや。そんな人を全校の女生徒が放っておくわけないやろ?」

はぁ、と烝は溜め息混じりに言う。


(何であんたはそんな事知ってんのよ…あたしはそっちのが不思議よ)


はカタン、とイスにもたれかかり、ん〜と唸った。


「でも新八は新八でしょう?どれだけ凄い人って言っても、

 あたしにはそれ以上でもそれ以下でも無いからねぇ…。

 要するに、烝が言いたいのは行動には気を付けろって事でしょ?」


「…そうや」


「肝に命じとくわ」


の笑顔に、烝は(ダメやなこれは)と小さく諦めの息をついた。





「全員揃ったようだネ、それじゃぁ始めようか」

新八の落ち着き払った声。

生徒会室がシィンと静まり返った。

「俺が今期生徒会長になった永倉新八です、みんな宜しくネ。

 至らない所ばかりだと思うケド、頑張るので補佐宜しく!」

パチパチパチ!と盛大な拍手。

「んでぇ、俺が生徒会担当の原田佐之助だ。皆、協力して熱い生徒会にしようぜ!!」

ガッハッハ、とジャージを纏った大柄な男が豪快に笑った。

「あれは?」

が烝に耳打ちする。

「体育教師の原田先生や、熱血指導で有名だがちょっと…」

烝が言い澱む。

「何よ」

「…脳がヤバイらしい」

「…あぁ、脳まで筋肉って事ね」

「言い過ぎやないか?…まぁ…そんな所や」

まぁ、それっぽいわよね、とははっきり言った。

「それと原田先生は今年新任で、永倉先輩とは仲が良いらしい」

「…」

「知らんのか?」

「…知ってるかも…」

は記憶の糸を辿る。

しかしそれは空ぶるばかりで、中々思い出せない。


「今日の議題は…えーっと、文化祭の事カナ」

新八が資料をパラパラめくりながら言う。


「もう文化祭の事を?」

「文化祭、通称『新学祭』。毎年9月の初めに行なわれる文化祭・体育祭共同の行事や。

 生徒会主動やからこの頃から準備を始めんと間に合わんのや」

コソコソと烝とは話した。

「普通そういうのって、実行委員を別に作らない?」

「さぁ…?何や、浮かへん顔して」

「だって超面倒くs「そこ、静かに」

の言葉に被せるように新八が注意する。


「「すみません」」


素直に謝る烝と



そして文化祭担当者と体育祭担当者が決まった。

因みにと烝は『文化祭広報担当』


「じゃぁ他の事はおって連絡するから…それじゃぁ解散」

新八の言葉にガタガタと皆が立ちあがる。






「なぁに?」

「今日サ、平助と一緒に帰る?」

「あぁ…帰ると思うけど?」

はそれがどうしたの?と訊ねる。

「平助にうちに寄るように言ってくれない?」

「良いわ、新八は一緒に帰らないの?」

「俺はまだやる事残ってるから」

「付き合おうか?」

「良いヨ、遅くなっちゃうし」

それじゃぁね、と新八はたちを生徒会室から追い出した。


「ツレないんだからな〜、もう」


はそう呟くと背を向けて教室に戻った。






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短くてすみません。