【PEACE MAKER】   Slapstick  〜School〜




「何?新八っつぁん一緒に帰んないの?」

「うん、忙しいんだってサ」

まだ胴着のままの平助に向かっては言った。


「1年なのにもう竹刀振らせてもらえるんだ?」

「まぁね〜、俺スポーツ推薦だし?優秀なの!すごいっしょ??」

「当然デショ?」


挑戦的な笑みを浮かべ、は言ってみせる。


「分かってるゥ〜」


おどける平助の背後から声。


さん!」

「あ、沖田さん!!」


平助同様胴着のままの総司が走り取ってきた。


(わ〜、胴着姿凛々しい〜…)


平助とは違う、何か艶っぽい総司に思わず見惚れてしまう。


〜…?…わっ!!


「わぁ!?」


「驚いた?」

「おっどろいたわよ、何すんの!バカ平助っ!」

はぎゅ〜っと平助の頬をつまんで引っ張った。

「いてて、頬つねらないでよ〜」


「仲、良ろしいんですね、付き合ってらっしゃるんですか?」



「止めてください、気持ち悪い」





!気持ち悪いって何!!俺超ショックなんだけど!!!!」
















【部活動は必須です!?】













え〜ん、とフザけて平助はに泣きつく。



「そうなんですか?良かった、じゃぁ私にもまだチャンスがあるんですね」



にっこり、と爽快に笑うもんだから、はまたも黙ってしまう。


(どうしてこんなに綺麗に笑えるんだろ…)


総司の言葉の意味を大して吟味せず、総司の顔を凝視する。


「…?さん?私の顔に何かついてますか?」


きょとん、と言う総司の言葉にはやっと我に返る。


「え、や!何も!!変わらず美しいです!!」


(何言ってんだー…あたしってば)


はがっくりと肩を落とす。


「あはは、可笑しな方だなァ本当…好きになってしまいそうですよ


最後の呟きは、誰にも聞こえなかった。


「部長〜」


奥の方で誰かが総司を呼んだ。


「あ、それではさん、また。行きましょうか、藤堂くん」

「はい…もう少しで終わるから待っててね、


どこか不機嫌そうな平助の背中を見やりながら、は戸口で待つ。




「藤堂くん」

「何ですか?」

総司は前を向いたまま、平助に視線をやらない。

「彼女、部活は?」

「…やらないそうですけど…」

「ふぅん…それではマネに誘ってみてくれませんか?」


平助はピタ、と歩みを止める。


(この人、絶対狙いだ)


平助の第六感がそう訴えた。


「一回誘ってはみたんですが、断られました」

「それを何とかしてください」


言葉を選んで選んで言うが、総司は気にも留めずに返してくる。


一気に空気が冷たくなった気さえした。



(この人の伝説もあながち嘘じゃなかったって事か…)



平助の脳裏に、沖田伝説がいくつか並ぶ。


温和そうに見えて、かなり好戦的で、キレると始末に負えない。


絡んできた不良を何人も病院送りにしたとか、学長でさえこの人には逆らえない。



まさに。




新学の王子改め、魔王





腹黒さは天下一と言う訳。



「貴方としても、彼女がマネージャーになってもらえれば部活に身が入るのでは?」


穏やかに、しかし笑っていない声でそう告げられる。


(まぁ一理あるっちゃぁあるけど)


平助は総司に気圧されてはいなかった。


「一応訊いてみます」

「御願いします」





遠い。




平助は総司の背を睨んだ。


何て遠いんだ。


剣の腕以上に、もう纏っている空気が全く違う。


それでも。




は渡せないから)




平助は絶対負けない、と心に誓うのであった。












「絶対ヤだ」


「即答!どうして!!」


「だって面倒くさそう」


ここは新八の家の前。


2人して主の帰りを待ってる。


「イーじゃんか、マネージャーぐらい!」

「あのね!マネージャーってかなりキツぃ仕事なの!あたしそんなのやりきれる自信無いし!!」

「何かやりたい部活とかあるの〜?」

平助が半ば拗ねたように続ける。

「無いけど」

「だったら!」

「別に帰宅部でも良いじゃない」

と平助の押し問答が続いている。




「ダメなんだなァ、これが」




  「「新八!!」」


2人の声がそろう。


「おかえり〜新八っつぁん!」


「ただいま、で、何でがいるのサ?」


「別に良いじゃない、で何でダメなの?」


新八はを見てニヤリと笑うと、家のカギを開けた。


「今年から校則が変わったの、1・2年は絶対にどこかの部活に所属してなきゃなんないんだよネ」


「な、何よそれー!!」

の叫びが新八の家にこだます。


、うるさいから」

「え〜!?そんなの反則だよ、帰宅部あるからこの学校に来たのに」

「しょうがないデショ、今年から学長が変わって方針もかなり変わるらしいから」


新八の説明に、は納得できなさそうな顔をする。


平助の内心はしてやったりである。


「良いじゃない、やっちゃえば、マネージャー」


「だってぇ〜」

「俺からも頼むヨ、がマネだと色々助かるし…」


苦笑を浮かべて新八も言い募る。


新八にそこまで言われて、無碍にするほどは人間ができてない。


「ったく…しょうがないなァ」


「てか!何で新八っつぁんが言ったら聞くのさっ!!」


平助の猛抗議には耳を塞ぐ。


ってば、どうしてヤだったの?」


はぁ、と溜め息と共に新八は問う。


「…冗談、平助に言われた時にもう決めてたのよ」


「へ?」


素っ頓狂な声に、はおかしそうに笑う。


「でも、なんか平助の言う通りになるのが癪に障っただけぇ〜」


「何だよ、それぇ!!」

「初めから決めてたよ、他にない平助の頼みだもん。当たり前じゃない」

「ひどいっ、ってば!!」

「えー?じゃぁマネ辞めちゃうぞー?」

「冗談です!!さまっ!」


あはは、と2人は笑い合う。


そこに新八がジュースを持ってやってきた。


「ま、大変だろうけど頑張ってネ、











が、しかし。



「はぁ!?」



の大きな声が格技場に響く。









オーディションだなんて聞いてない!!!!」









「当たり前じゃん?言ってないし」

しれっと平助。

「だって言ったらエントリーしないデショ?」

意地悪く新八。

「頑張ってくださいね!!」

天使の笑顔で総司。

「案ずるな、皆お主の敵ではない」

て、あなた剣道部ですか!?一すゎん。

「マネージャーがうちのクラスにいると便利なんだよ」

お前が言うな、土方。

「ま…頑張りぃ」

興味無さそうに烝。



「やだっ!止める!!エントリーなんてする気無いッッッ!!」


はダッと格技場から出ようとする。



、頑張れよな!!!!」



(そ、その声は市村くん!?)



「…し、仕方無いわね…★☆★☆」





((((ぇええええぇぇぇえ!?))))





剣道部一同の心境、察するばかりである。


「で、審査って何するの?」


「体力、精神力、学力、そして家事ができるかで私たちが審査するんですよ」


(え、ちょっと待って、それじゃぁ…)


「そうです、私たち皆、さんの味方なのですから、必ず合格しますよ」


にこり、と総司は告げる。


「剣道部のマネはこの学校で一ニを争う人気。…やらないと示しが付かないんだヨ」


困ったもんだネ、と新八は苦笑を浮かべる。


「で、何人?」


手っ取り早くやっちゃいましょう、とが言う。


「34」



「は!?」



「34人…」


は自分の耳を疑った。


今年のマネージャー希望者は、何と34人


「…やってらんないわ…」


の呟きだけが、格技場の天井へと消えた。







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