【PEACE MAKER】      〜例えばこんな逸話〜    十一




「全くもって大馬鹿者やな」



「うっわぁ…烝、あんた本気であたしの事バカにしたでしょ」

「当然や、大阪の人間が『馬鹿』言う時は本当に貶す時だけやからな」

「ひっどぉー、これでもあたし大活躍だったのよ?」

「2人揃って怪我して帰ってくるのの何処が活躍や、阿呆」

「あ、阿呆になった」

「フザけとるんやない!」

ぴしゃり!と烝に怒鳴られた。


何でみんなそんなに怒るのさ?


意味分かんないよ。


総司も怒られたのかな…土方さんに。


「お前、どれだけみんなに心配かけた思てるんや?」

あたしは無言で答える。

烝がはぁ、と溜め息をつく。


何でさ。

少しぐらい帰りが遅くなる事なんて良くある事じゃない。

なのに。


あたしが女だから?


その問いは喉の奥で止まる。


「で、何であんたがいるのよ」

「山崎さんは今、沖田さんの所や。せやから、お前の手当ては俺が…「冗談でしょ」

あたしは烝の言葉を遮って言った。


「はぁ?」


急に何言い出すねん、と烝は眉を寄せる。




いや、それはこっちの台詞だから。




「怪我の部位聞いてないの?」

「見たら分かる」

「…横腹だけど」

「見たら分かる」

「…じゃぁ「つべこべ言わずに脱げや」




それってセクハラ!!!!!!




「お前出血多量で死にたいんか?なら好きにさせたるけど」

「死ぬのは御免ね」

「なら早ぉせぇ!」



う…。


「脱げや!」

「じゃ、じゃぁ烝も脱げ!!




「何でやねん!」





「あたしだけじゃ不公平でしょ!!」




「な、何言ってんねん!お前アホか!!訳分からへんわ!」



「あんたこそ!!」


「良いから早ぉ脱げ!



明らかに苛立っている烝ちん。


冷静さ失ってますよ〜?


可愛いな、烝ちん♪


本当に脱がせようか。←ぇ。



「あぁ…そうか、大丈夫や。俺はお前の事取って食おうとは思わん」

「そういう事をサラリと無表情で言うのはどうかと思うわ」

「…だったら何や、俺が頬染めて言った方が良ぇっちゅーんか」

「それはそれで気色悪いわね」



「脱がすぞ」



じりっと烝が1歩踏み出す。


「ちょ、ちょっと!分かった、分かったわよ、もう…知らないからね」


「何がや…」

ボヤきながら烝は布やら何やらを準備し出す。

「ほーぅ、お前こんなんでよぉ歩いたな」

傷を見ながら烝が感心(?)したように言う。

「歩いたワケ無いでしょ」

「ならどうやってここまで帰ってきたん」

平助にお姫様だっこ☆してもらって」

「へーぇ、良いご身分やな」

「引いてるでしょ…」



「当然」



テキパキと、烝はあたしの横腹を布で巻いてく。

消毒とか何か知らないけど、意味不明な液体のおかげて血は止まったし。

痛みも然程無い。


さすがさすが。


フとあたしは小窓から空を見上げた。

今日はあまり星が見えない。

月が明るすぎるからだ。

難しいものねぇ。

ややあって、視線を感じた。


「何?」

「いや、別に」

言うと烝は視線をズラしてしまった。



「…欲情した?」



「アホ言え」


何よぅ。


あたしが頬を膨らますと烝はまたしてもはぁ、と溜め息を残して部屋から出ていった。


本当に何もしないで帰っちゃった。


まぁそれで良いんだけど。


それはそれで何だか複雑ね。←何だお前。


思春期の男子としては良くないんじゃないかしら。


などと姉じみた事を思ってみる。


ちゃーん、開けるで」


おっと、この声はアユ姉だ☆嬉。


「はーい、どうぞー」

「今日は大変やったなぁ、大丈夫やった?」

アユ姉は心配そうに言った。

アユ姉はあたしが新撰組に来てから、ずっと仲良くしてくれている。

みんなそうだけど、アユ姉はちょっと違う。

何処か懐かしい、家族の雰囲気を持った接し方をしてくれる。

アユ姉はあたしを妹のように可愛がってくれる。


あたしの大好きな人。


「あれ?もう誰かに手当てしてもろたん?」

「はい、烝に」

「あいつに?」


おや?


急に静かになるアユ姉。

あたし何かいけない事言ったかな。


と、突然。





「烝ぅーーーーー!!!!」





アユ姉はバシーン!とすごい勢いで障子戸を蹴破る(泣)と

すごい速さで廊下を駆けて行った。



まぁ何と無く予想がつくので、あたしは後を追わなかったが。


え?

知りたいって?

それじゃぁ→ここ←行ってみなよ。(まだ行けません。謝)


、ナニゴト!?」

「あ、新八」

「今、すごい形相でアユ姉が走って行ったけど…」

「気にしなくて良いんじゃない?ただの姉弟ゲンカでしょ」

「(…君が言うとすごく他人事みたいに聞こえるヨ…)…それよりサ、副長が呼んでたヨ」

「ゲ」

「とうとうだネ。頑張って」

にやり、と新八が意地悪く笑む。

「あ〜面倒くさい…」

「行かなきゃ斬られるヨ」

「もう斬られたっつーの」

そんな洒落にならない洒落を飛ばしながら、あたしは土方さんの部屋へ向かった。





―次→

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烝とはギャグにしてしまいたい。
何故って関西弁だからw←安直。
でも、アユ姉11話にして初登場ってどう!!
本当にぐっちゃぐちゃだなぁ、このお話w苦笑。