【PEACE MAKER】      〜例えばこんな逸話〜    参


「あ、藤堂先生!珍しいですね、道場にお一人で」

「君ー、それは厭味かな」

怒っているのか、それは?

「藤堂せんせー、頬が緩みすぎでーす」

ちゃん、ひどすぎっ!でも可愛いから許すー♪」


何だこの人。


まぁしょうがない。


だってあたし可愛いもん。←お前が何だ。


「道場に女連れてこられて〜彼女ですか?」


はっ?


「あ、見える〜?」



はァ?



「羨ましいですね〜、先生!」

「平助…なにコイツ。新人?」

「そ、昨日から八番隊に配属されたんだ」

「ふぅん、名前は?」

「清水、だっけ?」


いい度胸だな、清水。


「清水くん、あたしも一応二番隊の隊士なんだ、よろしくね」


「え!!??」


そんな驚かなくても。


確かに、隊務はサボりまくってるかもしれないけど。

刀の腕には自信あるし。


こう、オーラみたいなモンで伝わらないものかな。←無理だろ。


「じゃー藤堂先生の監督の元、あたしと一本やってみる?」


何か今日は闘いたい気分なのよねぇ。


何、血が騒ぐっていうの?


「藤堂先生、見ていただけるんですか!?」


ちゃん、本気?」

「ほぇ?」

「清水、結構強いよ」

「へぇ…じゃぁ平助、あたしは?」


「君は、もっと強い」


珍しくにやっと笑う平助を横目に、あたしは竹刀を構えた。


あたしは    強い


すぅっと息を吸って、目を閉じる。


周りの空気が変わる。


「始め!」


「ぅおりゃぁぁあああ!!」


雄叫びと足音。

竹刀が空を切る音。


瞬間に、あたしは目を開いた。


紙一重で面に向かってきた相手の竹刀を避けると、

そのまま間合いを詰める。

胴へ。

相手もそう上手く決めさせてはくれない。

面へ振り下ろした竹刀をそのまま横へ振りぬいてきた。

目の前に、それが迫る。

それをしゃがんで避ける。


次はあたしの番ね。


しゃがんだ姿勢のまま下から上へ竹刀を振り上げる。

ちりっと相手の頬にかする。


速い。


でも、まだまだね。


後ろに跳んで避けた相手の胴目掛け、竹刀を振りぬいた。



ピタっと両者の動きが止まる。


「一本」


平助のへらっとした声が聞こえた。

清水、の呆けた顔があたしを見据えている。


「やっぱりちゃんは強いねー」

「ったり前でしょ〜、ダテに総司の相手してないって」

にへらっと笑い合って、あたしは竹刀を下ろした。

「清水くんも中々だったよ?」


中々なんてもんじゃないよ。

正直、びっくりした。



「あんた、名前は」



さん、あんた本当に強いよ。俺が刀交えてきた誰よりも、きっと」

「あはは、そりゃぁセカイが狭かったんだねぇ」

「いえ…本当に。何で。何であんたは隊長じゃないんだ?」


痛い所ついてきたな。


ちゃんは隊長になれないんじゃなくて、ならないだけだもんねー?」

それまで黙っていた平助が口を開いた。


「いやいや、はなれないだけだヨ」


「隊長!」   「新八っつぁん!」


〜、隊務じゃない時は隊長じゃないデショ」

「ごめん、新八、つい」

「ついって何」


「あの。なれない、とは…」


「あぁ、はネ。サボり魔なの」


「は…?」


「新八ぃ…バラさないでよ」



「それにしても、やっぱり強いね」

「ん〜?」

ってば」

「見てたんだ」

「見てましたヨ」

「鼻が高いでしょ〜、あたしが二番隊にいるから」

「ん〜、まぁそうネ」



「ぉう!!??」


後ろからがばっと抱き付かれた。


重ッ…


「ずりぃよなぁ、新八っつぁん、ちゃんウチにちょうだい?」

「ダメ。平助、から離れなサイ」

俺はむしろ抱きついてる平助が羨ましいヨ。と新八が呟いた。

「ちぇ〜、ちゃん可愛いなぁ」

「何脈略ない事言っちゃってんの、平助は」

「本当の事だよー」

「いい加減、から離れてくれる、平助」

ギランと新八の目が光った。


「さぁーて、斬られない内にサイゾーのエサでもやってきますかね」


「あ、ちゃーん!」

、またネ」


―次→

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長くなりそうで失敗。