【PEACE MAKER】 〜例えばこんな逸話〜 四
「ブギッ」
ぼんやりとあたしは縁側に腰掛けた。
幾程時間が経っただろう。
「なぁーにやってんの、。こんなトコでサイゾー頭に乗っけてサ」
「…新八」
「今度はつい、は無かったね。ヨシヨシ」
フザけたように新八があたしのあたしの前髪辺りをなでる。(サイゾーがいるからね)
「こ」
子供扱いしないでよ、と言おうとしたがそれも最後まで続かなかった。
何だか泣きそうで。
「?」
どうしたの、と新八はあたしの頭からサイゾーをのけた。
陽はほとんど傾いて、空は紅くなっている。
「さ」
あたしが黙っていると新八が話し出した。
「強くなったよネ」
強くなったよね。
「本当に」
あたしは俯いたまま顔を上げられない。
上げたら、新八の顔を見たら、涙が出そうで。
いつからあたしはこんな情緒不安定になったのだろうか?
人前でダラダラ涙流す事なんて、今まで無かったのに。
「新八ぃ…」
「何?」
「あたしは強くなんかないよ…」
「でも弱くもないデショ?」
うぅん…弱いよ。
こんな泣きそうな自分。
「でもあたしは強く在りたい…」
そう。あたしは強く在りたいのだ。
「ブギッ?」
サイゾーがあたしの顔を覗きこむ。
「ねぇ、“強さ”って何だと思う?」
「“強さ”…?」
あたしがそう呟いた時、新八の膝からサイゾーが飛び出した。
「あれ〜お二人さん、何してんるんですかァ〜?」
「総司」
妬けますねぇ、と総司はくすくすと笑う。
「じゃぁ俺もう行くネ」
そう言って新八が立ちあがる。
あたしとそう大して変わらない背丈。
けれど、とても大きく見える背。
その背を見送る。
“強さ”の答え、訊きそびれちゃったな…。
「永倉サンと何話してたんですか?」
「ん〜、強さについて」
「強さ?」
「そ、あたしが強くなったねって話」
「あぁ…そうですね。あなたは強くなりましたよ、本当」
遠くを見るように、総司は目を細めた。
「でも同時に、あたしは弱くなった」
こんなにも周りに頼ってる自分に気付く。
「良いんじゃないですか?ヒトとはそういうモノです」
ね?と総司は柔らかく笑む。
また慰められてる。
ダメだなぁ、あたし。
皆に気を遣わせてる。
「鬼の総司がヒトを語るなんて100年早い」
「まじめに話してるのにぃー!ってばひどすぎます!!」
「今更ヒトには戻れないよ」
あたしの呟きに、総司がぼんやりと微笑う。
「なぁに言ってるんですか!は充分ヒトらしいです!」
「…それ、新撰組の隊士に向かって言う台詞…?」
じとーっと目を座らせて言う。
総司は慌てて、ごめんなさい。と苦笑いを浮かべた。
「ありがと」
ヒトよりヒトらしいのは新撰組の皆だよ。
優しい人たち。
ありがと。
―次→
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無理だ…ッ!←何が。
暗い…暗すぎる。
無理だッ!!