【PEACE MAKER】      〜例えばこんな逸話〜    七



死なないと約束する事は 難しい。


あなたの命を奪うくらいなら


死なない覚悟が あたしには無い。





「オイ、

廊下を歩いていると、土方副長に呼びとめられた。

「何です?」

この間の事もあるので、あたしは素直に振り向いた。←痛っ。




それが災難の始まりだった…。




「土方サンってば、自分で買いに行けば良いのにー」

ぶーっと総司が横でむくれている。

「しょうがないデショ、副長様直々のご命令なんだからサ」

「…、何か隠してるんじゃないですか?」




エ、エスパー!!??




「ぜ、ぜぜ全然そんな事無いよ!!」

「そうですかァ?怪しいなぁ…急に永倉サンみたいな話し方して…」

「怪しくないって…純粋に副長の役に立ちたくて…」

の台詞とは思えませんねぇ」

「俺は今、永倉だから」

フザけないでほしいなぁ…


あはは、と総司があたしに笑みを手向ける。




怖いっすよ…。



どう見ても黒い笑みだったよ、今のは。


そう、あたしは副長に墨を買ってこいと頼まれ…否、命令されたのである…涙。

それで庭先で声をかけてきた総司を道連れに、町へ出てきたのだ。

因みに今日は2人とも非番。


「お使いの前に小間物屋寄りません?」

「え?良いけど…誰かに贈り物?」

「…えぇ」

「妬けるわねぇ」

「何言ってるんですか」

そう苦笑して総司は歩みを速めた。




にですよ」




「へ?」

総司の背を見ながら、あたしは素っ頓狂な声を出した。


にあげるんです」

「…あたし簪なんて似合わないけど」

「…良いんですっ!絶対似合いますから!」

だから、差し上げたいんです。そう総司はちょっとだけ頭を傾けながら困ったように笑った。

「調子乗っちゃうわよ」

「どうぞ、乗って下さい」

くすくす、と笑いながら総司は足を止めた。

あたしが追いつく。



簪を貰えるなんて、初めて。



で、でも、簪なんて女みたいなことっ!←え。

自然に笑みがこぼれる。



嬉しい。



「早くー」

総司に急かされて、あたしは彼の隣に並んだ。



‐‐‐‐‐‐それからどうした?



「随分遅くなっちゃいましたねぇ」

「副長怒るだろうなー…」


小間物屋へよっていたら遅くなってしまった。

辺りはすでに薄暗く、空は紅く染まっている。


「でも良い買い物できましたね」

「…良かったの?あんな高い物」

「良いんですって。こういう事にお金使わないでどうするんですか」

にっこりと総司が笑う。


紅い花が良く映える、簪。


あたしはそれを今髪に差している。




『あなたには紅が良く似合いますよ』




今までこんな雰囲気になる事なんてなかったのに。

急に。

どうしたの?


総司ってば。



おかしいじゃない。




「どうしました?」

「え?何でも無いけど…」

中途半端にあたしは言葉を切った。

「総司」


「何です?」


「何かおかしくない?」


「何が」

「分かってるくせに」

あたしの言葉に総司が頬を膨らませる。

「だって、折角二人っきりで出かけたのに」

「水さされちゃったねぇ」

「えー…いやですよ」

むーっと荷物を抱える手に力が入る総司を見、はぁとあたしは溜め息をついた。


さっきからずっとつけられてる。


「サボる気?」


「今日私は非番ですー」


「だってウザイ」


「しょうがないですね」



お相手して差し上げましょうか、総司はそう告げ向きを変えた。






―次→


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ぎゃぁ!!
次は戦闘シーンだ。
難しいんですよねぇ( '_⊃`)