【PEACE MAKER】      〜例えばこんな逸話〜    九


簪よりも先に見つけたモノ。

それは、人の、足。

恐る恐る見上げて見る。


何も、考えられない。


ただ、首だけを動かして見る。



「久しぶりだね、



懐かしい声。

1番聞きたくなかった声。


「あ…」


口から声が漏れる。


…?」


後ろで総司が怪訝に言った。


「強くなったね、


にこり、とそいつは笑った。


笑った顔のまま、抜き身の刀を振り上げる。




動けない。




「でも、成長はしてないみたい」


言い終わりざまに、“そいつ”は刀を振り下ろした。






   死    ぬ    。





ザシュ!


斬れる厭な音と、舞う血飛沫。


しかし、痛みは襲ってこない。


目の前にいる、この綺麗な髪の細身の人は。





「総司!!!!!」




ずる、と総司の体が傾く。


「ちょ、ちょっと!」


総司ってば、何で!?


何であたしの前にいるの!?



そして、あたしの手にあたる生温かい液体は、



   な    に    ?



「あはは、壊れちゃったね、が弱いからだよ」




   壊    れ    た    ?




総司が?


「でも、そんな奴の1人や2人壊れたからって、には何人も玩具がいるだろう?」


この人は、何を言っているの。


「知ってた…?玩具は壊す時が一番楽しいんだって」





「誰が、玩具ですか」




押し殺したような、唸り声。


手にかかっていた重力が減る。


「そ、うじ…」

、大丈夫ですか?」


にこり、と変わらず総司は笑む。


その左の肩から、ざぁっと血が流れ出して総司の白い着物を染めていた。


「下がっててください。は、私が守りますから」


その目は“あいつ”を睨み据えている。


「玩具にしては頑丈みたいだけど。その目、鬼の目じゃなくて、男の目だよ」


“そいつ”は、笑っちゃうね、と言って微笑んだ。


「新撰組一番隊隊長さんも、所詮は人の子という訳か」


「私は、鬼の子です。だから、あなたを容赦なく斬り捨てます。


 覚悟はよろしいですか



総司がすっと刀を構える。


厭だ。


あたしを守るために戦うなんて、止めて。


「怖い怖い。今日のところはこれで引き下がるよ。

 でも、

 また近いうちに迎えにくるからね」


「待ちなさい!」


「勝負はお預けだ、沖田総司」


“そいつ”は、気味の悪い笑みを浮かべて夜闇に消えた。



あたしが、何をしたというの。


あたしが、“あいつ”を壊したの。


あたしが、一体。


  何   を   し   た   と   い   う   の   。



、大丈夫ですか?ってば」


数回名を呼ばれて、あたしはやっと気付いた。


「あ…うん、てか!!大丈夫じゃないのは総司でしょ!?」


「え、あ、はい、でもこんな傷平気ですよ〜」

「平気じゃないでしょ!こんなに血が」

出て…と言おうとした口を総司の手で軽く塞がれた。

「帰りましょう?」

「…うん」



“あいつ”だ。




4年前まで、一緒に過ごしていた。


1年前急に現れて、一個の隊を全滅にさせた。



“あいつ”がまた、現れた。



あたしの全てを壊しに。








―次→

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

くっら。
暗いねぇ。
やだやだ。
ギャグが書きたい。
シリアスはもう沢山だ!!←おい。