【PEACE MAKER】 例えばこんな逸話 SECOND STORY
壱 〜HOW OLD ARE YOU !?〜
「総司!!!!!あの野郎共…何処行きやがった!!!!!」
呼んでる呼んでる。
あたしは笑いを噛み殺して隠れていた。
隣の総司と目が合う。
「「ぷっ」」
「そこかァ!!てめぇら!!!!」
やば…。
「見つかった!!」
「逃げましょう!!!」
「当ったり前よ!!」
あたしと総司は物陰から飛び出すと、一気に門を抜けた。
「待てェ!!総司!!」
後ろで土方副長の怒声を聞きながら、あたし達は笑い合った。
あ、一応、始めましての方にはあいさつを★
あたしは、新撰組・副長助勤・二番隊所属!
隣を走ってるのは、沖田総司、同一番隊隊長。
「あ、沖田さァーん!!」
その総司の名を呼ぶ声が1つ。
「あれ?鉄クンじゃないですか。お使い終わったんですか?」
「はい!!」
背丈の低い、元気な小犬のような男の子が向こうから走ってきた。
その後ろから、大きな荷物を背負った、こっちは背の高い人が走ってくる。
……………誰?
「鉄――――ッ!!」
「速くこいよ、辰兄ィー」
「あはは、御疲れ様です」
「沖田さんはお出かけですか?あれ…そちらの方は?」
3人の視線がいっせいにあたしに向いて、思わず口篭もる。
「あ、あたしは―――…」
「分かった!!沖田さんの…コ・レ?」
そう言って、小犬くんは小指を立てた。
「「は…?」」
小犬のくせにませてるな…
そして、仕草が親父染みてるな。
「アァー!!鉄ッ!!お前また失礼な事を!!!!す、すみません沖田さん!!!」
「何だよ、辰兄ー。ノリ悪ィぞ!」
「そう言う問題じゃないだろ!!」
「良いですよォ、辰之助さん、気にしないで下さいっ♪」
沖田さん、何でそんなにウキウキなんですか?
「で、結局のところ…沖田さんのアレなんですか?」
「「は?」」
「何だよ、辰兄だって気になってんじゃーん!!」
「じ、実はな」
苦笑を浮かべながら、辰之助さん(?)は言った。
兎に角。
「人の事、だれそれのアレコレって言わないでくださいっ」
失礼でしょ。
「す、すみません」
辰之助さんは深深と頭を下げてくれた。
「何だよー、ケチくせぇなぁ。じゃぁ名乗れよ!」
…生意気だな、こっちのちっこいのは。
「鉄クン、好奇心旺盛なのは構いませんが、口には気をつけましょうね」
そう言いながら、爆笑寸前ですよね、沖田さん?
「え!?沖田さん、それは一体…」
顔を青ざめさせながら、辰之助さん(?)は言った。
「ゴホン、どうも初めまして。新撰組・副長助勤のです★」
「「ええぇえぇえええぇぇぇえええええ!!!!!?????」」
ちょっと、失礼じゃない?
兄弟揃って。
「お前隊士なのか!!??」
「…あたしが隊士じゃ悪い?」
「そんな…女が隊士ってアリかよ!!!???」
「女が隊士じゃ悪い?」
それって男女差別でしょ?
この時代にそれは無いか。
「女が隊士になれるなんて…どんな手使ったんだよ!?まさか…」
まさか、何よ。
「色仕掛けで?」
「は?」 「ぷっ!!!あっはっはっはっは!!!」
あたしが怪訝に眉を寄せると同時に、総司が吹き出した。
ギっと総司を睨むと、彼は口を押さえた。
ちっこいのも、吹き出された意味が分からず当惑している。
「て、鉄クン…何で色仕掛けだなんて…ぷっ」
「そ・う・じィ〜?」
「ご、ごめんなさい。ゴホン、それで何故です?」
「…いや…お姉さん可愛いし…副長も…」
「あたしはちゃんと隊士試験受けて入った“隊士”です!!」
失礼しちゃうわ。
「し、失礼しました――――ッッッッッ!!!!副長助勤の方とは知らずに、とんだご無礼を…」
「いやいや、無礼だなんてそんな良いですから……いい加減名乗れ♪」
「そっかァ…は鉄クンたちが入隊した時江戸へ行ってたんでしたっけ?」
「す、すいませんでした!!!!!!会計方の市村辰之助です!!!」
あーぁ、半泣きだよ。
何か、こっちまで胃が痛くなってよ。
「こっちが弟の…」
「市村鉄之助」
「よろしくね、市村くん…市村くんは…隊士?」
こんな小さな子まで隊士にすんのか、新撰組は。
「ぷっ」
え?何?
何で総司吹き出してんの?
「小姓」
「は?」
「鉄クンは土方サンの小姓ですよ」
笑いを猶もこらえながら総司が教えてくれた。
は?
土 方 さ ん の 小 姓 ! ! ? ?
「そ、そうなの!!??」
「…あぁ」
「…ご愁傷様…だからかぁ…あたしが隊士なのが納得いかないのは?」
「…あぁ」
ありゃ。
拗ねちゃって。
「やっぱり納得してない…っぽい?」
「当たり前だろ!!」
ぷっ。
ちっこいのは子供らしいなぁ。
無邪気で、怖いモノ知らずで。
「お前が沖田さんと同じ立場なんて…」
「でも列記とした副長助勤よ」
「ほーぅ…だったらその“副長助勤”らしく働かねぇか、…」
地獄の底から響いてくるような声。
「ふふふふふふ副長!!!!」 「土方サン!!!」
「総司…てめぇも何遊んでやがる…」
「ふ、副長…?」
異様な空気に負けず、辰之助さんはおずおずと声をかける。
その勇気、感服しますよ…!!!
「市村くんか…使いご苦労」
「頼まれていた物はどうしましょうか…?」
「部屋に持ってきてくれ」
「分かりました」
そう言って、辰之助さんは屯所へ入っていった。
まさか…この場から離れるために…?
く、黒っ!!!
「副長!」
「何だ」
「何でこいつが隊士なんですか!!??」
「ア゛?」
「俺は小姓なのに…」
ニヤっ。
!!??
土方副長が悪そうな笑みを浮かべた。
「ひ、土方サン…今、良からぬ事考えてません?」
「良いじゃねぇか…市村、お前、と勝負してみろ」
「は?」
何言ってんのさ?
「それでに勝ったら、望み通り隊士にしてやろう」
「マジで!!!???」
「マジだ」
ニヤっと、またあの笑みを浮かべて言った。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!」
「何だ?文句は言わせねぇぞ。今までサボった分はチャラにしてやるから、やれ…
じゃなきゃぁ…稽古と巡察、一週間の刑だ」
「えーッ!!理不尽!!」
「理不尽なのはてめぇだッ!!」
「だって、こんな小さい子と試合なんて…」
あたしが言い募ると、今度は鉄之助くんが口を開いた。
「小さい子、だって?」
「へ?」
「俺はもう子供じゃねぇ」
「…じゃぁ…いくつよ?」
「…俺は15だッ!!!」
ん何ィ―――――!!!???
驚愕するあたしを見て、また総司は吹き出した。
「手加減は無用だ、それで良いな、市村?」
「女だからって容赦しねーぜ!!」
「…はぁ…」
まぁちょっと相手してやって…適当に負けるか。
「オイ、、負けたらお前は俺の小姓だ」
…ぜ…絶対負けられねぇ!!!!!
「〜、頑張ってくださいね〜」
総司がサイゾー抱えて手をブンブン振っている。
「…はぁ…」
「鉄ーッ!!油断するんじゃないぞ!!相手は女子でも副長助勤の方なんだからな!!!」
あぁお兄さん、あなたも胃が痛いですね。
「始めッ!!」
ザッ。
先に動いたのは鉄之助。
まずは定石、右の上段。
おっといけね。
あたしは元々体術…空手や柔道の使い手だから、剣術の言葉使えないんだ。笑。
まぁあたしの場合、空手も柔道も中途半端だけどね。
鉄之助くんの竹刀をギリの所で避ける。
「おしいっ!」
見物人の新米隊士たちが声を上げる。
鉄之助くんの同類がまだいた、って事ね。
やんなっちゃうわ。
それを遠くで見る総司と副長。
「…相変わらず、無駄の無い、舞うような剣技ですね」
「…そうだな」
さぁて、次はどうするの、鉄之助くん?
「らァ!!」
次は胴。
だけど甘い。
あたしは後ろに跳んでそれを避けた。
「チィ!」
跳ぶのと同時に竹刀を振る。
ブンっと空気を切る。
「あ、あぶねっ」
「…やるわね」
「今度はこっちの番だっ」
鉄之助くんがバランスを保ちながら、突っ込んでくる。
「そんな直線的な攻撃で、あたしに勝てるか!!」
あたしは振った竹刀をそのままの勢いを保ち回転し、さらにもう一撃、今度は上から。
パァン!!
「一本!!」
余裕余裕♪
あたしは竹刀を自分の肩に乗せ、トントンと叩いた。
「くっそォ!!!」
「鉄クーン、竹刀もう一本いかがですか?」
総司が楽しげに言う。
「何?もうやんないわよ?」
「えーッ!もう一本!!」
「い・や!」
疲れるし〜。
あたしは胴着と面を取ると、自分の部屋へ向かった。
―次→
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
始めましたー、原作沿い(?)
第1話、あんまり原作沿ってないですよねw
すみません↓。
今後ともよろしくお願いします↓。