【PEACE MAKER】   例えばこんな逸話  SECOND STORY

  弐   〜LOOK LIKE!〜



「この頃、今日の街が騒がしくなってきたわね」

あたしは空を見上げながら、呟いた。

「あぁ…もうすぐ祇園祭だしねェ」

浅葱色のだんだら模様を風になびかせて、新八は相槌を打つ。

「そう言う事じゃなくて…」

今度は新八にも、自分にも聞こえるか聞こえないかギリギリの声音。


風が騒いでる。


第六感とか、そう言う類を信じるガラじゃないけど…


頃は朝刻。今は巡察中。

屯所への帰り道。


、今日辺り、山南さんと平助たちが帰ってくるらしーぜ」


「え、まじで」


平助と山南副長は、江戸へ戻っていると聞いていた。

大方、隊士募集やら何やら雑務をしてたんだろうけど。

その2人が帰ってくる。


「騒がしくなるねぇ…」

「…お前絶対それ、平助の前で言うなヨ…」

「…うん、気をつける」


あはは。

あの厄介な奴が帰ってくるのか。←酷。



「じゃ、俺は報告行ってくるから」

いつの間にか屯所に戻ってた。

新八の後ろ姿を見送りながら、フと思う。




今日…稽古だっけな…。








   サ   ボ   り   決   定   !   !






そう決意して、あたしは部屋へ戻ろうとした。


その裾を踏んづけられる。


ズルッ!!


「ッッッ!?」


少しのところで踏ん張って、ずっこけるのは避けた。





「!!??あぶなっ…」


!」


急に名を呼ばれる。

この屯所内で、あたしを『』と呼ぶのは土方副長ぐらいだ。

だけど、この声は明らかに副長じゃない。

「市村くん…やってくれたわね…」

コケるのは避けられたものの、あまりの驚きに動悸がおさまらない。

、今から暇か?」

「…」


て言うか、厭な予感



「暇だったら、俺の稽古付き合ってくれよ!」



「ヤ・ダ!て言うか、何でなの?目上の人には敬語!」


「えーッ!だって、お前俺とそう年変わらねぇだろ!?それに俺はまだ認めた訳じゃねぇし!!」



こいつは…。



「まぁ…年はそう変わらないかもね…市村くんが本当に15なら








「俺は絶対に15だッッッ!!!」







「はいはい、分かったから。じゃぁあたしも鉄って呼ぶし」


「構わねぇぞ!で、稽古!」


「悪いけど、あたしこれから「サボるのは駄目デショ、副長助勤?」


帰ってくるのが早いのよ、新八。


「良いヨ、こいつ貸してあげる。どうせ稽古で昼から道場だもんネ?」


「くっそ…」


あたしはポツリと呟く。


「女が『糞』とか使っちゃまずいだろ〜」

「佐之、あたしはそんな漢字変換してないから」


目を伏せて否定しとく。


て、いつからいたのさ、佐之!?


「はっはっは、お前等が遅ぇから迎えにきた!」

「そっか、佐之は昼前から稽古だっけ」


チッ。


ツィてない。


この2人に捕まったらもう逃げられない。


チラリと鉄の方を見る。

目があって、奴はニカっと笑った。


はっはぁ〜ん、いい気味とか思ってやがんな★










いい度胸じゃん!!!










ももう逃げられないネ、着替えておいで」

新八もやったネ♪と笑ってる。


「…ちぇ〜」

ブー垂れながら、あたしは部屋で着替えて道場へ向かった。

「なぁ…」

竹刀を合わせながら、鉄は口を開いた。

「何でちっこいのに『貸す』だなんて言われてんの」

「あたしの事…まぁ、そりゃぁ当然でしょ?あたしは二番隊所属だもの」



「そうなの!?」



「いや、気付くの遅いし?」

「隊務もやってんのかぁ…」

「会った時、あたしちゃんと隊服着てたじゃない…」

呆れてあたしは座った。

向こうも座る。

挨拶。


「お願いします」


あたしがポツリと呟く。



「あ、お、お願いしますッ!!!」



気付いたように向こうも返す。

「まずはどっからでも好きな様にかかってきな」

やっぱ、弱点を克服しなきゃね。

それを見極める為に、何回か試合しないと。


あたしは稽古を見る際は必ずそうする。


必ず強くなってもらいたいから。



「ナメんじゃねぇぞ!!」

「はいはい、その息ね」


数分後…。


「…鉄?」

「あんだよ…」

「大丈夫?」

あたしのしゃがみ込む下には鉄。

ぜぇぜぇと息を切らしてる。


「何ッで一発も、入…んねぇ…んだよ…」


「当たり前でしょ?あんたの攻撃は直線的過ぎんのよ、もっと緩急とか柔軟とか…」

最後の方は独り言の様になる。


特訓には柔軟を入れるしかないわね。


腕立てと、腹筋と…柔軟ね。



?」

「ん?ぁあ、ごめん。何?」

「ちょっと休憩にしようぜ☆」


そんな爽やかな笑みで言われても。


「イーんじゃない、、休めば」

「休憩の後は新八に見てもらえば、鉄」

「えー…ちっこいのにィ?」





「ちっこいの、なんて言うのは…この口かァ?」




ぁ、手身近な所にハリセン発見★





スパァン!!





「い…!?」

あたしは思いきり新八の頭をすっぱ叩いた。



この場が地獄絵図になる前に、新八を止めた。


「…いい度胸じゃないノ、休憩終わったら俺とやろうか」



新八は叩かれた所をさすりながら言った。



「よっしゃー!!!やりィ!!!」



急に元気になった鉄。



その数分後、鉄はまた気絶する運命にある。






ざっぱぁぁぁん!!!


「お゙―――…」


鉄は鈍い声を上げながら目を覚ました。


「あ、鉄、気がついた?」


「んだァ、ヤル気ねぇなあッ」

佐之のデカい声が木霊す。

鉄は佐之と新八にコテンパンにやられた。


…2人共あたしより容赦無いじゃん。


あの兄貴が見てたら胃壊すよ。


“鉄”ってのはなァ。打たれりゃ打たれるほど強くなるってもんじゃねぇのかー!?」

「イヤ、お前にしては珍しく頭使った会話なんだろーけど、あおってどーすんの」

まてまて、と新八が井戸の前にいながら止める。

そして、声を落ちつかせて一言。

「あのサ、頑張るのはいいんだけど…ちょーっと無茶しすぎ。

 気絶して身につくもんじゃないんだしサ」




あんたらが無茶させたんや…!!!!



「お〜〜〜〜〜…」



鉄、大丈夫か。



「鉄、平気?全く、あんた等加減してやんなさいよ」


「だってよ、!こいつが向かってくんだからしょーがねーだろ!」

「そうだけど…あしらい方覚えろっての、佐之」

「猪突猛進型なんだよネ、鉄クンは」

新八が手ぬぐいで顔を拭き拭き言う。

「まぁ…ねぇ…。それは性格もあるだろうし」

あたしは言いかける。

「ま、イイじゃねぇの!前みてぇに腐ってるよか、ガキらしくていいゼ」


佐之、考えて無いんじゃないの。


「ん!そういえば…な、な、鉄クン。どうした訳?今日になって急にハリきっちゃってサぁ」


新八と佐之が鉄に覆い被さる様に訊く。


「お!!!さては女か!?スンゴイ事でもあったとか――――!?」




お前等親父かよ。




「…ん――――…いやなんて言うかさ。……久々に大人気ねぇ事考えちまったかな…ってさ」





沈黙が落ちる。






あれ、新八、つっこまないわけ?




お互いの顔を見詰め合う2人。そして「あっ」と叫ぶ。



「…俺としたことが…予想もしねぇボケに一つもツッコめなかった…」



バカヤロー!!おめーのせいで新八落ちこんじまっただろーが―――!!」







「「帰れ、お前ら」」



あたしと鉄の声が揃う。



「佐之…俺はもぅダメだ…いいツッコミ見つけろよ…ぐふっ


「新八――――――ッ!!!ちくしょ―――ッ!反漫才派かテメーは!?」



「テメーらドコまで本気なんだョ…」



最初っから最後まで冗談だよ、鉄…。


あたしはフと建物の中に目を向けた。


その縁側に見なれた顔。


「あ」


あたしが呟くと、向こうも気がついたらしく大きく手を振って来た。




「ヨーウ、佐之、新八っつぁ――ん!相変わらず漫才ってんなー?」


久しぶりの顔に、思わず顔がほころぶ。


「そして相変わらずってば可愛い―――――★☆★☆」


ぎゅーっと平助はいつも通りあたしを抱きしめる。


「暑苦しいって、平助。お帰り

「ん、ただいま♪


何だ、この夫婦みたいな会話。


「いよ―――ッ!平助!!」

「漫才師三号が何言ってんの。で?お前これから稽古?」

「あぁ」




「で…いい加減、から離れてくんないカナ」



新八の聞いた事も無いような低い声で、平助はあたしから離れた。




新八怖ッ…



「まぁたいらないところでお真面目なことで」

「なんだよそりゃ。ま、イイや。それより聞きたいんだけど…

 土方さんの小姓!どれくらい可愛い!?





現場が凍りつきましたよ、平助さん。





それから延々と理想像…ある意味の妄想を膨らます平助さん。





「ひかえめに言ってこんなカンジ?」


その妄想が頭に転送されてきたあたし、新八、佐之。






「ッぶ、わ―――っははははははHAはははHAはははは」


「平助〜〜〜!!悪いがその想像は鼻かんですぐに忘れろ!」


お前の為だ!!そう言って笑い転げる新八と佐之。




「何ィィ―――ッ!?」


「…平助、そう言う事だよ…」

は知ってんの!?」

「勿論知ってるよ、手合わせもした」

「え、小姓なのに?」

「…まぁ、ね」



「…わかった―――!床上手ッッッッ!!!!



平助…。


「大声出すのは自由だけどな。それ土方さん聞いたらお前斬られるぞ」


「新八、いい加減正解を教えてやったら」


あたしもいい加減笑いを堪えきれなくて、涙目になりながら言った。


「正解はこちら。これがうわさのダメ小姓、市村鉄之助君どぇ〜〜〜す!」


佐之に手を持たれ、ぶら――――ん。と持ち上げられる鉄。


「―…かッ、かっ…かっ…かか…かわい――――ッ!!すげー可愛いッ!!!




…なんですと―――――!!!??




4人が思いっきり引いたのは言うまでも無い。



「まさに仔犬!?…いや、でもサ。土方さん、こういう趣味だっけ…?


「いい加減そこから離れろ」


でも確かに小動物っぽいなぁ、鉄。


「あーゴメンね、鉄クン。こいつ悪気はないんだ。ただ無意識にちょっと…口が汚くてね…」

「え!?それは聞く側の心の広さの問題でしょ―――、失礼な」

「いやいや、平助そりゃちょっと自己中でしょ」

「そうかなー、。でも佐之を見習ってくれよー!

 “脳ミソまで筋肉の単純バカ”って言われてもきっと許すぞ。心広いから――」


「おうよ!俺は心広いぜ――!!?」








「ねぇ、お前さっきから密かに命の綱渡りしてることに気付いてる!?ねぇ!?」



「いつもの事じゃない、新八、ほっときましょ」

、何か悟ってるネ」

「…そう?」



あーぁ、鉄くんぼーっとしちゃってるよ。



「あ、そうそう市村君だっけ?自己紹介を忘れてたよ、俺、藤堂平助!

 新撰組では試衛館時代からの古株でさ…一応副長助勤っス。あっでも年は若いのよ!」


そう言って握手をする。


「可愛いものには目がないが剣の方はケッコー使います。以後ヨロシク!!!」


「ふ、ふーん…」



それを言い終わると、三バカで話し始めた。



「変な奴…」

鉄がポツリと呟いたのが聞こえた。

「普通の奴なんていないよ、この新撰組にはさ」

あたしはそう言いきる。

「あぁ…も変だもんな?」



「あははー。鉄…………後で覚えとけよ☆






―次→

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ちょっとは原作沿ってますかね?笑。

平助と山南さんとどっち書こうかと思ったんですけど、平助で。笑。

てか、平助と山南さん、出かけてたって勝手に決めちゃってます↓。