【PEACE MAKER】   例えばこんな逸話  SECOND STORY

  参   〜SO CRAZY〜



「あれ?」


あたしは抱えていた花越しに、通りを見た。

通りの向こう、大きな男数人に囲まれてわめいている。

あれは。


「…鉄?」


ポツリと呟く。

「あー…あれは長人やねぇ…」

「え」

あたしの視線に気付いたのか、新選組にいるあたしを慕ってくれる花屋の主人が相槌を打ってくれた。

長人?

なんて厄介な。

ちゃんも気ィつけ」

「…はぁ…」


そうは言っても。


あそこで絡まれてるのは鉄。


恐らく、長人もこちらも同じように騒ぎは起こしたくない筈。


浅墓な男共が、酒に酔って、ってところが相場だな。



「どうしてくれんだよォ、おチビちゃん。着物が汚れただろォ?」

「だから謝ってんじゃんか!!」

「それが、謝ってる態度かよ!!」

男が怒鳴り、鉄の襟を引っつかむ。




あーぁ…こりゃ始末に困るな。


そう言えば前にも鉄はこの類の輩に絡まれたって総司が言ってたな。


「離せよッ!!」


鉄の声が響く。



あーもう、全く。



「チっ」


あたしは小さく舌打ちすると、花を置いて駆け出した。


「暴れんじゃねぇ、このッッッ」


鉄を持ち上げてる男が、鉄を殴ろうと拳を振り上げた。


「ッ」


鉄が息を呑むのが分かった。


「感心しないわねぇ、こんな子供に男4人がかり?そりゃ鉄が構いたくなるほど可愛いのは見て分かるけど


男の腕を捕えながら、あたしは言い放った。


「お前!!??て言うか何言ってんだ!?

鉄が信じれない、と言った声で言う。

それを背中で制し、しーッという仕草をする。

ここで名を呼ばれるのは具合が悪い。

「鉄…あんたもいい加減絡まれるのが好きねぇ」

「好きでやってるわけじゃねぇよ!!」

「はいはい」



「何なんだ、女ァ」

耳に障る下卑た声。

「…いえ、この子はあたしの連れなんです。許してもらえませんか?」

「あんたが俺達の相手してくれるなら良いぜェ?」


あたしは女郎じゃないっつの。


「相手?」

「そうさ」

「…喧嘩のお相手ですか?」



「違うだろ!!」



あたしのボケに鉄がツッコむ。


「いいツッコミね、鉄。新八のアトガマにピッタリ」

「落ち付いてる場合かよっ!?て言うか、絶対それちっこいの怒るぞ!!」

「…そりゃそうね」



「ナメやがって…」

「思い知らせてやる!」


キレるの速過ぎでしょ。


カチっと刀の鍔の音。



おいおいおいおいおい…



この天下の公道で抜刀する気!!??


しかも女子供相手に!!!


信じらんない…。


「…お前ッ、何で刀もってねぇんだよ!!??」

鉄が叫ぶ。



君、素晴らしい百面相ですね。



「ばっかねぇ、女が刀持ってたら怪しーでしょうが…」

「そういう問題じゃねぇ!丸腰なら出てくんな!!」

「はぁー?助けにきてあげたのに、それは無いんじゃない?」




「お前等俺らを無視すんじゃね――――!!」



「ったく…でも、この頃って確か…」

あたしは空を見上げる。


昼番の時間だ。


新撰組の巡察がここを通るのはもうすぐのはず。


今日は、一番隊と五番隊。

総司と武田先生だ。


「よそ見してんじゃねぇぞ!!」


言われて、あたしは突き飛ばされた。


ずさっ。


土埃が舞う。


ッ!!」


鉄があたしの名を呼ぶ。

その頃には、あたしは態勢をすぐに立て直すと、ギッと相手を睨んだ。

しかし男はそれを意に介さず、鉄の方へ刀を向ける。


あたしは地を思いきり蹴る。


鉄の方へ振り下ろされかけた刀の主を、あたしの十八番。





後ろ回し蹴りフッ飛ばす。





「「「!!!!!?????」」」





!!」


あーあー、鉄ってば目輝かせちゃってるよ。


「言い忘れてたけど。あたし剣術専門じゃないのよ」

「は?」

「あたしは体術派なの」


言い終わらない内にもう1人が斬りかかって来た。


肩口辺りを狙われたそれをしゃがんで避けると、相手の手元に蹴りを一発。


…全く。大振りするからよ。


男はうめいて押さえていた手首を離すと、右頬を真っ直ぐに狙ってきた。



「甘いのよ」

あたしは呟くと相手の拳を左腕に受け流し、そのまま右拳を鳩尾に叩きこんだ。


「ぐえっ!」

うわぁ…下品。←酷。


あと2人。

1人があたしの襟を掴み上げ、持ち上げた。






破廉恥な!!!←お前…。





「男をナメてんじゃねぇよ…」

勝ち誇った、笑み。

「ばかねェ…あんたこそ、女ナメんじゃないわよ?」

くすっとあたしは笑みを添えた。

相手はかなり逆上したみたいで、刀を引いた。


突き刺す気ですか。


それはちょっと止めてほしいなぁ…痛いから。

トンっと相手の胸の辺りを軽く蹴って、反動をつける。


「え?」


間抜けな、声。

あたしは相手の肩口を引っつかむと、思いっきりその腹へ膝を埋めこんだ。



   T  H  E    大  車  輪  ☆




「ゲフッ」



醜いアヒルのような声を出すと、あたしの襟を掴んでいた手の力が抜けた。

倒れ込む前に地に下り立つ。


「あと1人」


ポツリと呟く。

相手の顔から色が消えている。


「うらああぁぁあぁああああぁぁあぁ!!」


半ば叫びながら、残りの1人が突っ込んできた。


しかし。


その刀が届く事は無い。






「そこまでです」





「お、沖田さん!!」


聞こえたのは、総司の落ち付いた声と鉄の安堵の声だった。

「あ、総司」

、お怪我はありませんか?」

男の腕を締め上げながら、にこりと爽快に笑って言った。



怖ぇよ…。



「だ、大丈夫よ」

「そうですか、では、この方は始末しておきますね」

そうして、総司は残りの1人を簡単に、斬り捨てた…。



「1人で何してたの」

鉄の買い物(?)の紙袋を片手に、あたしは尋ねた。

「んー、アユ姉が居ないからさ…買い出し。本当は辰兄も居たんだけど、先帰れって言われて」

「ふぅん」

アユ姉は仕事なのか…。

は?」

「あたしは花屋にね」

「…あっそう…てか、、お前強ぇじゃん!!!!」

「当たり前でしょ」

「俺びっくりしたぜ!?後ろにフッ飛ばされたと思ったら急に蹴りだもんな!!!」

「…ちょっとは見なおした?」

「あったりまえじゃん!まじすげー!!」



鉄ってば可愛いなぁ、本当。


「…」



…?

どうしたの、急に押し黙っちゃって。


気色悪い…。←酷。


「どうしたの?」

はさ」

「何?」

「人、斬った事ある?」

「…」


そりゃぁ。


これでも。


「あるわよ。



 新選組隊士だからね」


「そっか…じゃぁ、さ。人、殺した事は?




長い、沈黙が落ちた。




「そんな事知って、どうするの?」

「うぅん…さっき、沖田さんが折角が生かした相手、簡単に斬り殺しちゃってたじゃん…。

 それってなんか、悲しいなって思って」

「…鉄って」


あたしが言いかけると、何?と鉄はあたしを見上げた。





「かわいー♪」




平助みたく、あたしは鉄を抱きしめた。


「なッ。何すんだよ!!??」


「良いじゃん良いじゃん♪…鉄は、何か迷ってるの?」

「…まぁ、な。でも、その前に選ばせてももらえないから。オレがガキだから」

苦笑まじりに鉄はあたしから離れる。

「…あたしは、刀を握って選ばされたのは十の頃。総司は九つだった」

「え…?」

「土方さんは、自分を責めてる」


いつも、いつも。


「後悔してる、あたしや総司に刀を持たせた事、それはあたしたち自身が選んだ事なのに」


鉄が押し黙る。


「辰兄はよく言うよ…沖田さんたちは人を殺すのに躊躇わない。あれは」

一端言葉を切った鉄は重々しく口を開いた。








「狂気以外の何モノでもないって」








―次→

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長いってw

びっくりするってw笑。

これも原作沿ってないけど。

次にアユ姉が登場します。

そして烝。

池田屋まで一気に加速して、んで…ウフフ♪←気持ち悪ッ。