【PEACE MAKER】 例えばこんな逸話 SECOND STORY
四 〜BEFORE THE DAYS〜
「狂気ねェ…」
あたしは鉄の言葉を反芻した。
「どーしちゃったノ、ってば」
「おかしいな、変なモンでも食ったんじゃねーの?」
「佐之、お前じゃあるまいし〜」
「だな〜」
「笑い事!?ねぇ、佐之ってばそれ笑って流していいの!?」
…ブチン。
「ッッッあんたたちうっさいのよ!!!!!」
キ――――――――ン。
「「「の方がうっさいっス…」」」
「何か言った?」
「イエ。何でもありまセン」
新八が目を逸らして小さくなる。
ったく、これだから3人そろうと厄介なのよ。
「んで?どォしちゃったのサ、一体?」
「んー…大した事じゃないんだけどねぇ…」
本当、大した事じゃない。
「何だ!!??恋の悩みか!!??」
((佐之………))←平八心の声。
「恋って言うか…まァ鉄の事なんだけど」
「子犬ちゃんがどうかしたの?」
あんたたちがしてる事は狂気以外の何モノでも無いって辰之助さんが言ってましたよ(爽笑)
なァんて言える訳無いでしょ。
でも正直、そう思った時もあった。
あたしが彼等と会ったのは、もう随分前の事のように思えるけど。
あの時、既に刀を握ってたあたしに、土方副長は。
『お前の刀は奪うそれじゃねぇ』
だから、刀を離せ、と。
『当たり前じゃない、あたしは奪う為じゃなく、護る為に刀をとるんだから』
そう言い張ったけれど。
『では選ぶんだな。ここに反幕府のハタかかげてる奴等がいる…永倉たちと共に行き、始末してこい』
総司も、新八も、あたしが刀をとる事に反対しなかった。
それが何故だったか、あたしは知らない。
ただ、それはあたしが鉄を黙って見てるのと同じで―――…
って、何してんの、あんた等。
「、っ!ちょっと来てみ?」
平助があたしを手招きする。
素直にそれに従う。
肩を抱く格好で、平助は「ホラ」と指をさした。
「鉄…?どこ見て…」
「女デショ、お・ん・な」
「女ァ!?」
鉄ってばいつの間に!?
って、そうじゃないか。
「カワイそーだけどさ、“初恋”はやっぱ、ほろにがくなくっちゃね」
かなわぬ恋よ…と新八が感極まった感をかもし出す。
「新八…あんたの口から“初恋”なんて綺麗な言葉が出てくるとは思わなかったわ」
「ってば失礼過ぎ。俺にも“初恋”の一つや二つあるんだからネ…」
「いや、新八っつぁん。二つ目は“初恋”とは言わねぇから」
「わー!!新八ってば平助につっこまれてる――――!!!」
超ウケるんだけど!!!
「…笑い過ぎ」
新八のオーラが一瞬黒くなったのでこれ以上続行は不可能です…涙。
「それにしても、童が人妻おとすってのも面白いっしょ――!?」
「それもそうね」
「やっぱもそう思うか!?」
「甘ーよ。『目標・一発やらせてもらう』だろ、コリャ!!」
「一発ゥ?そんな一夜だけの関係つまんなーい」
「は女郎とかには向いてないネ」
「でしょうね」
「て言うかさ!!俺、前聞いたんだけど!!
昔の部屋に忍びこんできた新米隊士を再起不能にしたって本当!!??」
「再起不能!!??」
イヤ、新八ってば声デカイから。
しかも何、その誤解生む噂。
「誰…誰そいつ…まだココにいる?…ギッタンギッタンのペシャンコにしてやる…」
怖っ…。
「し、新八っつぁん、誤解だから!!
忍びこんできた野郎を、再起不能なくらいボッコボコにのしちゃったんでしょ!!??」
「へ…?そうなノ?」
「うん、まぁ…お恥ずかしながら」
寝こみを襲われるとは最初っから考えてたのよ。
ホラ、あたし。
可愛いから☆←死んどけ。
「そっかー、だからには男ができないんだな!!」
佐之…それ。
「それどう言う意味?」
だ か ら って何?
「う…すまねぇ…」
「良いのよ、あたしに拳で勝てない男ならこっちから願い下げよ」
「…俺ちょっと自信無いかも…」
「平助、大丈夫だ、俺もナイ」
「で、鉄の話に戻すけど」
「んーやっぱり十五ともなればねぇ?」
「「「「………………」」」」
「や」
山南さん………!!!!
「や、山南さん、どーしたんスか。こんな所で」
暇なんでしょ。
「あッ分かった。ヒマなんでしょ!ね♪」
平助お前……!!
「まぁとにかく、君達の言わんとしていることは分かった。
どうかな、ここは一つ。
私に任せてもらえんだろうか」
え…山南さん何する気?
なりゆきを見守ってみるか。
「まぁとにかく、そんな君には“休息”が必要だ」
だからって。
「『島原』へ。
鉄が」
うわ…白っ。
「ゴメンねー、止めりゃ良かったんだけどさ」
「またまたぁ、新八これっぽちも止める気無かったでしょ〜」
「は黙ってて!!!」
「…ごめん」
新八さんの目が光りましたよ…?
あれは幻覚でしょうか、そうであってください。
「ってゆーか、俺達も非番だったらよー」
拗ねたように佐之が愚痴る。
「平助の奴も行ってるし、まァ問題ないっしょ!」
「問題あるとすりゃあ使い物になるかどうかだな!!」
オイ。
「言えてらー!あのナリじゃ十五といえど分かんねーぞ」
そんな事、あんたに言えないよ。
どうか気付いて、新八。
辰之助さん、老けていってます。
「そんな時の言い訳!『母ちゃんのオッパイが恋しかったんです』!!」
「お子ちゃまー!!」
「あ゙―――!のぞいてみて―――!!」
「いい加減にしときなよ、2人共」
「ってば面白くないノー?」
「だぁれが。あたしは人の恋路に首突っ込むようなバカじゃありませんからねぇ」
「あっ、っ」
パタン。
「はぁ…」
あたしは部屋を出ると、廊下の柱に寄りかかった。
「溜め息ですか?」
いけませんねぇ、と落ち付いた声が聞こえた。
「総司」
「幸せ逃げちゃいますよ?」
にこり、と総司が笑み付きで声をかけてきた。
ブギッ。
サイゾーもいつもの場所にいる。
『私は朔を放っておくことなんて出来ません。力になりたいし、守りたいのです』
あの時の事を、あれから総司は何も言わない。
「どうしたんですか?」
「何でもな…スパァン!!!!「いざ島原!!!」
な、何事!!??
光速度で駆け抜けていく辰之助さんの背中を茫然と眺める。
「な、何かあったんですかねぇ…」
「…あ、はは…ははは…」
冷えた笑いのまま、あたしは視線を明後日の方に向けた。
「で?」
帰ってきた鉄は、何であんなに塞ぎ込んじゃってんですか?
「いやぁ…」
平助が言い澱む。そして、チラリと辰之助さんを見る。
「十五歳にして初めての春ってか!?」
「どーよ、辰之助兄サン」
「本当に原因分かんねーの!?」
「ハイ?」
「鉄が塞ぎ込んでる理由ですよ」
あたしは正座を崩しながら言った。
「いや、だからー。気にしないでください。なんともないですから。
“恋の病”ってやつじゃないですか?」
ハハハ…と明らかに渇いた笑いを浮かべながら、辰之助さんは頭をかく。
無理しちゃってまぁ…。
「?何してんノ?行くヨ」
「あぁ、うん」
理由も結局分からぬまま、あたしは立ちあがる。
「あぁ、お三方。
今後は極力弟で遊ばぬ様お願い出来ますか。
島原の件は流石に胃袋もなんとか袋の緒も極限状態に追いこまれましたからね…
ヨロシク頼みます」
…アハハ…ハハ…ハ。
「「「「…きもに命じま―――す…」」」」
3人と共にあたしは部屋を出た。
「…ってもよ、大丈夫かね。ホントに…」
「十五歳にして初めての春ってか!?」
「そっちじゃねーよ」
「え?」
「…何にせよ、これから荒れるわね」
あたしの声だけが、虚しく消えた。
―次→
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よすぃだ先生とか無書きかよ、みたいなねw
すみません↓。
鈴も全く書かずで。
その割りに相変わらず無駄に長い…↓。
てか、前回に烝とか出すって言っときながら。
出てなくてすみません…。土下座。