【PEACE MAKER】   例えばこんな逸話  SECOND STORY

  五   〜DIVING INTO YOUR HEART〜




「辰之助さんはあんな事言ってたけどサ」

「何かあるよな」


隣で新八と平助がうーんと唸ってる。

今日の昼番は二番隊と八番隊。

隊服を翻しながら、あたし達は京の町を歩く。



はどう思う?」



「へ?」



きゅ、急に話振らないでよ。


「仔犬ちゃんのコト」

「あぁ…そうねぇ。鉄も辰之助さんも、何かに怯えてる感じはあったわよ」

「同感」

平助があたしの言葉に頷く。


辰之助さんや鉄からは、敵を追い詰めて最期、斬り捨てる時。


その敵が自分に向ける眼差しに似ている“何か”を感じる。


「俺たち、余計な事しちまったみてぇだな…」

「本当にネ…どうするヨ?」

「どうするも何も、無いんじゃぁない」

「そりゃぁそうだけどさぁ…あいつ、ずっとこもりっぱなしだぜ?」

「アユ飯も食べないしネ」





鉄。


あれから押し入れに入ったまま、顔を出さない。



アユ姉。


最近、昼夜問わず出かけてる。



どうしたの。


一体、何が。



ぎしっ…。



妙な胸の軋みを覚えて、あたしは眉を寄せる。



…コホッ。



小さな、咳。


「どしたノ、。風邪?」

「何々、、風邪ひいちゃったの!?早く帰って寝た方が良いよ!!」

「…大丈夫…てか、平助うるさい


「ひでぇ!!」




心に閉じ込めたままの気持ちが、そこから出ようと暴れる。


無理矢理縫い合わせたそこから、徐々に吹き出してくる感じがする。




?大丈夫??」

「…ぇ」

「さっきからぼーっとしちゃって。着いたヨ?屯所」


あれ?


本当だ。


「今日の稽古は良いからサ、休んどきなヨ」

心配そうな新八の声。

「んー…ありがと」


何ともないんだけどなぁ…。

だけど、取り敢えず寝てみることにした。



、俺は君を殺しに行くよ。だから、それまで死んじゃ駄目だからな』

ねぇ、どうして。

『君の全てを壊しに、行くよ』

どうして。



手を離せばするりと指の隙間から落ちてしまいそう。


目の前が、真っ赤に、染まる。




「ッ!!」


息を思いきり呑んで、真っ赤な視界の次は。



「なぁッ!!??」


息苦しさと視界の悪さに思わず声を上げてしまった。



で、でもでも…



何!!!???


バッと顔の上に乗ってるモノをどける。



「サ、サイゾー…」

あたしは脱力して、サイゾーを掲げる。

能天気にブギっと鳴くサイゾー。

「はぁ〜…」

溜め息をつきながら、あたしは体を起こす。


「だから、溜め息は駄目ですってば」

「そんな事言ったって…出ちゃうもんは仕方無いでしょ」

「もォ、そんなんだから風邪なんてひいちゃうんですよ?」

「それも不可抗力…って、総司!!??



いつから居たのさー!!??



こんにちわ、と相変わらずの笑みで総司は飄々としてた。


「ここ、一応女の子の部屋よ!!??」


「大丈夫です、何もしませんから(爽笑



何か違うでしょ、それ――――!!!!



「大丈夫ですか?」

「何が?」

「何がって…風邪なんじゃなかったんですか?」

「あ。ぁあそっか」

「そっかって…まさか仮病ですか!?いーけないんだーいけないんだー。


 土方サンに言ってやろー★」



「止めて―――!!!て言うか、仮病じゃないから!!!」


「あ、そうなんですか?」

「そうそう」


うんうん。


あったりまえじゃない。




「なぁに?」

サイゾーの頬をビーっと伸ばしてみる。


おー良く伸びる良く伸びる。








「何?総司、改まって…」

「最近、変じゃありません?」


「あぁ、鉄たち?確かにねぇ…」


「違いますよ、です」

「はぃ?」

ですよ?様子がおかしいのは」


何言っちゃってんのさ、総司ってば。


あたしはどこもおかしくないよ?

普通普通。


ねぇ?

サイゾーと目を合わせて問う。

だけどサイゾーはブギっと鳴くだけで。

どうせ、サイゾーは総司の味方だもんねー?


「以前の、あの方と関係があるんですか?」


「無いよ!!」


はっとして、あたしは口を覆った。


バカだー!!!


即答で言い切るなんて、勘のいい総司にはきっと分かってしまうのに。



あぁああああぁぁぁああ…


総司の視線が痛い。




1度目。



2度目。





3度目。



「何よ…」


。鉄之助クンが何故新撰組に入りたがったのか、知ってますか?

 何故、刀をとりたがっていたのか、知ってますか?」


そんなの。


「知らないわ」




「親の仇討ちですよ」




ぎしっ。


くっ…そ…。


あたしは胸の奥底で軋んだ痛みを、布団の下で拳を握って堪える。


、あなたは、あの方をどうしたいんですか?」


「…ッ」


、今度あの方があなたの目の前に現れたのなら、

 そして、あなたを殺そうとするのなら、あなたはどうするのです?」


どうするも、何も。


「覚悟が、甘いんじゃないんですか?」

「そんな事」

「では、殺せるのですか?」

「…」

「あなたはきっと、近藤サンや土方サン、私や永倉さん、鉄之助くんたちが危険となれば、

 あの方を殺す事ができるでしょう…ですが、きっと独りならば、

 あなたは自ら死を選ぶのでは無いですか?」

あいつと、対峙した瞬間に、その決断を下す。


「だったら、どうなの」




「そうならば、あなたが死ぬ前に、私があいつを殺します」




「ダメ!!」


「何故です」

「だって…」

「私では、あいつに敵わないとでも?みくびらないで下さい、この間はちょっと油断しただけで…」


確かに総司なら、あいつに勝てるかもしれない。


だけど、勝てないかもしれない。


そんな危ないカケさせるわけにはいかない。


総司は、あたしにとって、大切な人だから。



「鉄之助くんは、鬼になると決めました。

 あなたは、どうするのです?あの方と何があったのかなんて知りません。

 ですが、私はあなたが死ぬのは厭です。



 あなたは、何の為に新撰組にいるのですか?



「ッ」


息を呑むしか、なかった。


言葉は喉につかえて出てこなかった。



以前のあたしなら、『強くなるため』と真っ直ぐ見据えて言えたはずなのに。


いつのまに、決心は鈍ったのだろう。



もしかしたら。



忘れていたのかも、知れない。



新撰組という、非情な人斬り集団の、純粋な温かさの中で。


?」


名を呼ばれたが、答える事はできなかった。


「鉄之助クン…」


立ち去ろうとした総司が襖を開けて、素っ頓狂な声を出した。




「え?」



そこには、湯呑を持った鉄が立っていた。





―次→

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

やっぱり烝出てこなかった―――――!!←逝ケ。
誰とのドリが読みたいですか?アンケートですが。
一位だった方と落ちたいと思いますw
本当、誰と落ちるか迷ってるんでw
今のとこ、新八っつぁんかなぁ…w

それでは、次回の講釈で。


1