【PEACE MAKER】 例えばこんな逸話 SECOND STORY
六 〜WON’T BREAK WITH THE PAST〜
「あ…、あの…お茶でもどうかな、と思って…」
鉄がしどろもどろになって言う。
総司はその様子を見て、にこりと笑うと、
「それでは、お大事に」
そう言い残して部屋を後にした。
「突っ立ってないで入ってきなよ」
あたしはおぼんを持って茫然と立っている鉄へ手招きした。
「あ、おう…」
そんな動揺しなくても…。
「、ごめん、俺…」
「別に良いって、あたしも鉄の話聞いちゃったし」
「俺の話?」
「…鉄が新撰組に入ったのは、仇討ちの為だって」
「…」
ありゃ。
黙っちゃった…。
「本当なんだ?」
「…あぁ。俺の親は…長人に殺された。俺の目の前で、俺は…何もできなかった」
…。
「ここでなら、鬼のなり方が分かると思った」
鉄の目は、真剣だった。
「は」
その目が、あたしを見据える。
「何で新撰組にいるんだ?」
「…最初は、強くなるため、それだけだった」
あたしは初めて過去を、話す。
「そう。初めは…途中で目的は変わった。ある人を殺すため、あたしは生きるようになった。
それができてもできなくても、いつ死んだって構わない。そう思ってた。
だけど今は。
死ぬのが恐ろしい」
「…?」
鉄の呟きが、耳に入ってはすぐに消えた。
「今は、ただ護る為にあたしはここに居る。
総司や新八、あいつがあたしの大切なモノ全てを奪いにくると言うのなら、
あたしは生きて失わないようにしなければならない。
それは、彼等があたしの足枷となっているわけじゃなくて」
そう。
全てが終わる時まで、生きて、一緒に。
「むしろあたしがあいつ等の足枷になってる。
それが厭で、仕方が無いんだ」
総司が、あたしの為に刀をとると言ってくれた。
新八が、あたしを必ず守ると言ってくれた。
「」
「ただ、失うのが怖い。
あたしが死んでも、その所為で失うのが。
あたしは。
次に会ったときに、あたしはそのある人を、殺す」
『覚悟が、甘いんじゃないですか?』
言ってくれるじゃない、総司。
あたしを甘くみないでよ。
「、あのさ。そのある人って、お前とどんな関係があんの?」
きょとっとした顔で鉄は訊いてきた。
「ん〜、ある時は父親、ある時は義理兄、ある時は師匠…恋人だった時もあったっけ…」
「何だよ、それ…って言うか、父親なのに恋人!!??」
「果たしてその正体は…
敵よ」
「え…?」
「あたしの親はその人の家族を殺した…その人は、あたしの本当の家族を殺した」
やったらやりかえされる、なんて幼稚な考えだと思ってたけど。
「あたしで止めればって思ってた。けど。洒落にならないところまできちゃったの」
あいつは、あたしを殺さなければ終われないらしい。
自分の手を見つめる。
まだこの手は死の匂いを知らない。
あいつがあたしの全てを奪いに来ると言うのなら。
迎え撃とうじゃないの。
あたしは絶対に手放さない。
絶対に、負けない。
―次→
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て言うか、安直ってツッコミは無しで!!苦笑。
因縁をねぇ…どうしようか迷っていたんですけど…。
結局、安易に考えちゃった★←逝ケ。