【PEACE MAKER】 例えばこんな逸話 SECOND STORY
十二 〜A FIRM RESOLUTION〜
キイィィィィン…。
吉田の横から、刀が飛び出してきた。
「!!!……しいっ!!チィ!」
平助だ!!
あんのバカ…。
「ッカ……おまっ、平助ェッ!!!」
新八の声、そして、続く平助の攻撃。
「…せいっのおォ!!」
平助の刀が、吉田の槍をブッタ斬る。
「ちったぁコレでェ使い易くなったかなァ!!?」
ははっと笑いながら…。
言ってる場合か、バカ平助!!
明らかな殺気、他の奴等と比べられないほどの、迷いの無い、どす黒い気配。
背筋に冷たいモノが流れた。
ヤバイ!!!!
「!!!バカ逃げろォ!!!」
新八が駆けだし、あたしもまた、その後を追う。
間に合わないッッッ!!
新八の刀が吉田の槍に届くか否か、その時新八が槍を刀で払った。
「「平助ェエェッッ!!!!」」
あたしと新八の声が重なる。
平助の、額が裂けて地飛沫が舞った。
その時、
パァァァァン。
闇夜を劈く光りが、廊下に注がれた。
「新八ッ!」
一瞬、眼が眩んだ。
対峙するのは、あたしと吉田。
「、無茶だ!!退いてろ!」
新八の声が、あたしの耳から入ってもう一方から出ていった。
新八は右手から滴る夥しい血を押さえ、平助の傍らに居る。
生きてる、平助も。
とにかく、あたしも、今は、退く事はできない。
向こうは死ぬ気かも知れないけど、あたしは死ね無いから。
…どっちが強いのか、試してみようじゃない。
あたしはダンっと地を蹴った。
槍があたしの喉元を確実に狙っている。
あたしの動体視力をナメちゃイケマセン。
駆け出した勢いをギリギリの所で止め、槍を済んでの所で避ける。
刀を振り上げ、槍をはね飛ばす。
が、次の瞬間。
視界に入ったのは、吉田の足だった。
向かってきた足に手を置き、相手の力を利用してくるりと反対側へ回る。
空を切った吉田の左足のおかげで、左ががら空きになる。
体術勝負なら負けないつもりだけど。
やっぱり大男の力には敵わない。
吉田の左足が間髪入れずにぐるりとあたしに向かってきた。
「ガッ」
右腹に衝撃。続く鈍痛、息が抜ける。
そして、自分の体が空を切る感触。
初めて、フッ飛ばされる感覚を知った。
障子戸を貫いて、畳の上を滑る。
一瞬意識が飛んだ。
全ての感覚が遮断される。
「―――――――ッッッ!!!!」
新八の声だ。
息が、上手く出来ない。
咳と言うよりは、もっと危機的な呼吸。
「ゴホっ、ゴホっ、ゲホっ…」
体をくの字に曲げ、あたしは咳き込んだ。
「ッ、ダイジョウブ!!??」
「…だ、い、じょう…ゲホっ…」
くっそ…防御したのに…。
ガッシャァァァン!
派手な音がして、あたしはうっすら目を開いた。
総司が立っていて、吉田があたしとは逆方向へ飛ばされている。
そして、その向こう。
「て…つ…」
あたしの目には鉄が、しっかりと映っていた。
そして、それに気を取られた総司が飛んだ。
総司…………!!!!!!
あたしは立ちあがろうと、腕に力を入れた。
しかしその肩をポンと叩かれ、新八が立ちあがるのが分かった。
今、この場で動けるのは新八だけだ。
吉田の視線が、新八より鉄へ向けられる。
「―――――――!!何してんだ、鉄!!いくらなんでもそいつ相手じゃ分が悪過ぎる!!」
新八が懸命に叫ぶ。
「早く逃げろっ!!」
その声を合図に、鉄は廊下の向こうへ逃げ出した。
それを追って、吉田が総司が、そして新八もが向こうへ消えた。
まだ酸欠でぼーっとする頭に喝を入れ、あたしは体を持ち上げた。
「ッ」
小さく息を呑んだ。
「やっぱり居たね、」
にこり、と柔らかな微笑を含む声。
「…あんたこそ、やっぱり居たんだ」
あいつが、いた。
フラフラする足を隠そうと毅然と振舞う。
「あれ…?、愛刀使ってないの?…俺の為に残しといてくれたんだ?」
そうよ。
あたしは愛刀をあんたを斬る為だけに、とっておいたの。
スっと刀を抜く。
「強い眸だね…殺し甲斐があるよ…」
「あたしは死なない」
「…君は死ぬんだ、それで俺も救われる」
「死なないし、あなたは絶対に救われない。殺し、過ぎたよ」
「早く終わらせてしまおう、君の後ろに見える奴たちが邪魔しにこない内に」
あたしは別に、背負ってるわけじゃない。
だけど一緒に戦っている仲間は、同じようなモノだから。
「きなよ、相手してあげる」
言って、あたしは刀を構える。
「良く言うね…その口、閉じてなっ!」
あいつが向かってくる。
あたしが今まで手合わせした誰よりも速くて、的確な攻撃。
でも、あたしだって成長してる。
それを予想して、相手の刀を受け止める。
キィィィン!!
耳を劈くような厭な音が響く。
くっそう…あいつあんな細腕のくせにっ!!
ギリギリまで近づいて、どちらかとも無く離れる。
ザッ…。
さっきまでの喧騒が嘘みたいに静かだ。
動けない。
先に動いた方が、死ぬ。
「かかってこないの?…じゃぁ、俺から行くよ?」
う、そっ!!??
眼を見開いた時には、すでに眼下にあいつが居た。
一瞬の間に、間合いを詰められた。
あいつが刀を引く。
“突き”
最強にして、最大の攻撃法。
だけどそれは諸刃の剣だと、局長に教えられた。
あたしだって“突き”を極意とする天然理心流を学んだ身。
かわし方ぐらい、知ってる。
しかし。
ガッ。
「なッ!!??」
あいつはあたしの襟首を引っつかみ、逃げられない様にした。
だけど、あたしが最も得意とするのは“体術”。
刀をパッと離す。
襟口を掴まれた手を逆手に取ると、半身を引き、あいつの足を払った。
ぐるんっ。
あいつを一回転させて、ダァンと畳に叩きつけた。
横たわるあいつを見据えながら、あたしは刀を拾う。
首筋に突きつける。
あたしが少し手に力を入れれば、あいつは死ぬ。
「なに泣いてんの」
「ッ」
うるさい、それも喉を通らない。
「どうして殺さないの?まだ、足りなかった?……憎しみが」
空気が、変わった。
あたしは咄嗟に後ろへ飛ぶ。
その軌道を追って、あいつの刀が飛んできた。
「やっぱり、もっと殺しとくべきだった…この間も、沖田総司を」
「そんな事してみなさいよ…死んでも殺してやるんだから」
「…何でそんなにそいつ等を庇おうとする?君はそんな子じゃないでしょ、」
「うるさいわね、どうだって良いでしょ…だけどね、あたしにだって
譲れない物事の一つや二つあるのよ」
見据え、刀を構える。
今度こそ、容赦なんかしない。
大丈夫、あたしにはみんながついてる。
―次→
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オリジに突入。
やっと終わりが見えてきた。
本当に、戦闘のシーンは面白みがなくてすみません↓。