【PEACE MAKER】 例えばこんな逸話 SECOND STORY
拾参 〜AT THE RISK OF SHE’S LIFE〜
今度はあたしから、突っ込んでいく。
刀を腰の位地で構え、ただ、腹だけを見据えて。
強くなりたいと、何度も願った。
涙を捨て、血からも眼を逸らし、ただひたすらに『鬼』になろうとした。
だけど。
『…を守りたいと思ってる。守れるって自信もあるヨ。無茶はしないで…お願い』
新八、いつもあたしを見守っててくれた。
心配してくれて、いつもいつもあたしを支えてくれた。
温かい人。
『そんなに私の事が、新撰組のみんなの事が、信じられませんか?
そう簡単に、壊されたりしませんから。しぶといですよ〜、私は特に。
独りで抱え込む事なんて、無いんですよ』
総司、いつもあたしの隣に居て、笑っててくれたよね。
綺麗で眩しくて、あたしはいつもあなたに頼ってた。
強い人。
土方さん、あたし実はあなたに凄く感謝してます。
あたしを強くしてくれてありがとう。
烝、不器用な言葉だけど、ちゃんと伝わってるから。
鉄、お互いまだまだだね。
平助、ごめん、平助の顔を思い浮かべても抱きつかれた思い出しかないや。
みんな、ありがとう。
自己満足だけど、あたしはあたしなりにあなたたちを守ろうと思う。
たとえそれが間違っていたとしても。
あたしは強くなんかないから。
だから、力を貸して。
「覚悟」
ボソリ、と呟く。
突くと見せかけて、あたしは一度刀を引く。
突くと見せかけて、間を外す。
一回のそれは予想されているらしかった。
動じない。
あたしはもう一回それを繰り返す。
今度は、通じたらしい。
全ての攻撃は瞬く間。
ドンッ!!
あたしの“突き”があいつの腹に吸いこまれた。
ガッ。
全身を貫くような痛み。
肩口にあいつの刀が当てがられている。
これが、何よ。
あたしは足を踏ん張るように開くと、腕に力を入れた。
あいつの腹に突き刺した刀を、思い切り横に斬り抜いた。
「がはッ」
顔に降り掛かる夥しい血を厭わず、あたしはただカランと刀を手放した。
同時に意識もぐらぐらする。
あたしは膝を折ると、そのまま視界が真っ暗になるのを最後に感覚を失った。
「―――――――――ッ!!!!!」
…俺は、目を疑った。
あのが、倒れた。
最初、総司が倒れてて、鉄の奴が吉田と向き合ってた。
「あ―――…くそっ。なんてこった…!!」
「おお永倉!どうだ、そっちは片付いたか!?」
近藤さんが現れて、俺に話しかける。
「近藤さん、大変っスよ。鉄之助の奴が……!!」
「なぁあぜここに居るのだっ――――!?」
「相手が悪いって言ってるだろうが鉄―――――――ッ!!!」
俺は久しぶりにこれだけの声を張った。
「そいつは死ぬ気だ!!!」
「俺も死ぬ気なんだよ!!」
信じられなかった。
あれがあの仔犬だろうか?
そこで、ハタと気付く。
「近藤さん…は…?」
「くんか?…知らぬが…」
ぞわり。
背筋が凍るような感覚。
厭な、予感。
「俺っ、探してきます!!ここ御願いします!!」
近藤さんに場を任せ、俺は奥に急いだ。
『あたしが自分を見失ったら、新八が、あたしを殺してね』
何ではあんな事を言ったのだろう。
死なせちゃならない。
だけは。
殺させない。
そう何度心に誓った事だろうか。
それも、次の部屋を覗いた瞬間に打ち砕かれた。
が男と斬りあって、相手の男は腹を斬り裂かれ倒れた。
も、一太刀を浴びせられていて、そのまま倒れた。
ウソ、デショ………?
「―――――――――ッ!!!!!」
―次→
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あーぁ、やっちゃったやっちゃった。
相変わらずの血生臭。
苦情はお手柔らかに…笑。