【PEACE MAKER】   例えばこんな逸話  SECOND STORY

  八   〜WE ALL ARE HELPLESS〜


「烝」


返事が返ってこない。


「烝」


「次はお前か。何や…」


酷く低い、威圧的な声。


「いつまで閉じ篭ってる気?」


烝の部屋の襖を開けずに、ただ廊下から雨音に負けぬような声で話す。


「そうして、頭にキノコが生えても知らないんだから」


「お前何やねん、説教ならもう聞いた。それともお前、あのチビに何か言われたんか」


「へーえ、心当たりがあるようで。でも残念、違うわ。

 あんたが何にこだわってるのかは知らない。アユ姉があんたに何と教えてたかなんて関係ない」



雨が酷くなるその前に。



「ちゃんと、前を見て」


雨雲が心を支配して、何も見えなくなるその前に。


「忍は忍でも、あんたは普通の忍じゃない。新撰組の、忍なんだよ」


それを、間違えちゃダメなんだ。


「この部屋に閉じ篭って、危惧が現実になるのを待つか。

 それともこの部屋から出て…「止めろや!!」


あたしは言葉を切った。


「もう、止めろ。それ以上言うと、ほんまに怒るで」


何よ、もう怒ってるくせに。


あたしだってねぇ…。


今すぐ飛んでいって、アユ姉を助けたいよ。


連れ戻して、ご飯作らせたいよ。


でも、できないんだよ。


あたしには、できない…。


『アユ姉?』

『そうや、これからはそう呼んで。ね?ちゃん』

『…アユ姉』

『ようできました♪ちゃんも綺麗な名前やなぁ…羨ましいわ』

『そうですか…?』

『そらそうや!歩も可愛ぇかも知れんけど、も良い名やで』

『…今スラっと自我自讃しました?』

『手厳しいなぁ、ちゃんは。でも、その名、大切にするんやで?』

『はい』

『可愛ぇなぁ、ほんま、妹が出来たみたいや』


あたしだって、アユ姉の事、ずっと本物の姉さんみたいに、思ってた。


連れ戻しに、出たいけど。


だけど、ここは。


あたしがあたしの忠義を護るとき。





「…アユ姉から、伝言」









「『生き残るんやで』」









ダァン!!


畳を殴る音が聞こえた。


烝。


鉄。


頑張れ。


雨が一層強くなる。



その時。



「局長にお取りつぎを!」

「何事だ、一体!?」

「それが…




 数人の浪士どもが。よってたかって一人の女を――――



一気に、頭が冴えた。






     ア    ユ    姉    だ    !    !







あたしが駆け出すのと、部屋にいた平助が出てくるのは同時だった。


!!」

「平助!」


「「行こう!!!」」


平助の羽織りを借り、あたしと平助は他の隊士と共に、屋敷へと駆け出した。


道中は誰も何も喋らなかった。



「鉄!」


屋敷に着いたら、鉄が駆けこんできた。


「ぁ…」

鉄はアユ姉の着物を抱きしめて、泣いている。


次の瞬間には、その血のついた着物をあたしに押し渡した。


「え?」

持ってて…」


力の無い声、そして鉄はまた駆け出す。

「ちょ、ちょっと!」

「追いかけよう!!」

平助に言われ、あたしたちも駆け出した。




そして、見つけたのは。




真白なアユ姉と、ひたすらに蒼い空、座り込んでる烝の背中、そして。








無力なあたし達だった…。







―次→

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短ッ!!

短いっすねぇ↓。

てか、アユ姉のとこすごい省いちゃって…ごめんなさい!!!涙。



…ラァ!!←大丈夫?


だからシリアス無理だってぇ〜〜〜↓。涙。