【PEACE MAKER】   例えばこんな逸話  SECOND STORY

  拾壱   〜BE RELENTLESS IN EXECUTING REBEL!〜



横を歩く新八に、あたしはポツリと呟いた。

「ねぇ…新八」


「なぁに、


「もしあたしが自分を見失ったら、新八が、あたしを殺してね」








「何?」








新八が聞き返したのを聞かないフリをして、あたしは前を歩く総司のところまで駆けて行った。


…予感が、した。


ただ、漠然とした物なんだけど。


あたしを決意させるには、充分なんだよ。


いる、多分、あいつが。





だから、御願いね、新八。





の立ち回りも久しぶりですねぇ」

「ん〜?」

「だって稽古はいっつもサボっちゃうし。2番隊と当たる時はいつも平和だし…」

「良い事じゃないの…でもこの間浪士にからまれたじゃない」

「隊服と着物じゃぁ違うんですっ!」

「何、その偏った嗜好は!!」


あはは、と笑いが漏れる。

そう、あたしが隊務に出ると決まって平和に終わる。

御用改めも回ってこない。

刀は本当に久しぶりだ。


…笑ってはみたものの、心は何か不安で、その上後ろからの視線が痛くて。


「鉄は大丈夫かしらね…」

「分かりません…ですが、鉄クンは強い子ですから…」

「淡い期待を抱いてるわけね」

「…たぶん、土方さんも」

「でしょうね…でも、土方さんは一体何を…」


あたしは言い澱む。

前から思ってた、土方副長が鉄を見る『眼』は異様だって。


くん、総司、私語は謹んでくれるか?…次は」




「池田屋です」




戸口を叩くのは平助だ。



この異様な空気は、なんだろう。


これが、『正解』なのかも知れない。


一番前に平助と局長、次に総司と平助、そしてその後ろにあたしは付く。





結果は、大当たり、ってところだった。




階段にいた男を、局長がイキナリ斬り捨てた。




「御用改めでござる。手向かいいたせば容赦無く斬り捨てる。


 無礼すまいぞ」



局長が言い切る。


一瞬の沈黙の後、空気を劈く叫び。



「――――ぅ……ア……に、逃げろォオ!!」



灯りを踏み倒し、障子を蹴破り、2階から飛び降りる。


あたしは総司の後ろを担当。


だから、まァ楽っちゃぁ楽なんだけど。


あたしに向かってくる敵は、大方総司が斬り捨てちゃう。

何気に、総司があたしを庇ってくれてる。




「待てィ!怯むな!!大した数ではない!!皆がまとまれば倒せる数だ!!


 まずはその3人を血祭りに上げよ!!」


「「「ォオオオオ!!!!」」」


吉田(だろうか?)の掛け声とともに、複数の雄叫び。



てか、吉田…副長似!!!!!


…同一人物?んなワケ無いか。



その後に続く浪士。

しかし、その切っ先が届く頃には、浪士は無残に切り刻まれている。

あたしは2人に背を向ける状態で、後ろに回りこんできた奴等を片付ける。

大量の返り血が、全身に掛かる。



だから厭なのよ、刀は。



…副長、いい気味ね、あたし、ちゃんと殺せてる。



一通りを斬り捨て、また局長が口を開く。



「もう一度だけ言おう。手向かいいたせば容赦無く斬り捨てる」



しかし、それでも彼等は止まらない。




「「「ォオオオ――――!!!!」」」




     「ギャァ!!」    「ウァアア!!」    「うぁア゙ァ!!」



3人目。


あたしは刀を振るって血を払い落とす。

チラリと総司の方を見る。


相変わらずの鬼気迫り様で。


怖い怖い。


でも、敵との力の差は歴然。


圧倒的な、差だ。


一瞬、総司と眼が合う。


その眼が少し心配そうに細まる。


…大丈夫よ。


口だけ動かして、あたしは答えた。

あたしは視線を元に戻す。次がすぐに来る。

すっと両足を開いて、胴を切り裂く。

ザァっと血が掛かる。



「警告はしたはずだ!!!



 刃向かえば殺せ!!



 逃げる者にも容赦はするな!!!



 斬って斬って斬りまくれエェッ!!!」



局長の怒気を含んだ声を、久しぶりに聞いた気がする。


…1階に逃げた者も多いはず。

しかし下には新八と平助がいる。

まずは大丈夫だろう。

あたしは目の前の敵を見据えた。


相手は、へっと鼻で小さく笑うと、あたしに斬りかかってきた。


「女だからって、簡単には倒れないわよ?」


にやっという笑いとともに返す。


「ナメるなァ!!」


振り上げてきた刀をスィっと避け、猶も追ってくる刀を自分の刀で受け、払い上げる。


「うッ」


小さいうめき声、それからはあたしの独壇場。

思いきり、肩口から胸に掛けて切り裂いた。

が、そいつが倒れるより早く、次が来る。

「ッ」

小さく息を呑んではみたが、この手の攻撃は鉄や佐之ので慣れてる。

「甘いわよ!」

不敵に笑って、あたしは次も鳩尾あたりに刀を突き刺す。

さすがに切れ味が悪くなってきた。

あたしは階下に降りると、偶然新八が居た。



トン。



背中合わせに立つ。


「ドーヨ、調子は」

「まずまずって所かしら?」

自嘲気味な笑いを含ませ、あたしは言い放った。

辺りに圧力を掛ける事を忘れない。

殺気を振り撒く。

「…上は」

「総司と局長が。まァ大丈夫でしょ。吉田は下に逃げたようだしね?」

あたしの言葉に、初めて新八があたしを見る。

血のついた顔があたしを見て、挑戦的に笑う。

「宮部は」

「局長が一刀両断」

「やるねェ」

新八は何かを含んだような独特な笑みを浮かべ、視線を元に戻す。

「こっちも頑張らなきゃねェ」

「そうね、面倒くさい事この上無いけど」

「それ、副長が聞いたら泣くヨ?」

「…またそれ?」


あたしはやれやれと首を振って見せる。



「「じゃぁ、健闘を祈る!」」



あたしは一歩前へ踏み出す。

目の前の敵は2人。


1人は腰が引けて、もう1人は眼をぎらつかせてる。



…危ね―――――――………。



「オラァ!!」

薄暗い廊下を駆けて来る相手。

左の上段からの攻撃、あたしは右に避け、そして横腹を思いきり蹴り飛ばす。


もんどりうって、そいつはもう1人の方へ倒れこんだ。

ゲホっ、ゴホっ、がはっ…そんな咳き込む声と、ぶつかられた方の怒りを含んだ声。


「ッそォ!!」


「…根性あるねェ」

あたしは呟くと、そのまま刀の先を普通より少し下げて相手を待つ。

突っ込んできた相手を、一瞬の間を外して、横腹に刀を突き刺す。

思いきり引き裂いて、ドサッと相手が倒れるのを見送る。


そして、フと感じる。


体の中がザワザワする。


この感覚は、何だ。



「…何か、来る」



あたしがぽつりと呟くと、上から総司が、向こうから新八がやってきた。


てか2人とも血だらけ―――――…。


あたしも変わらないか。


、下がっててください」


総司があたしより一歩前へ出る。



暗い廊下の向こう、あたしが2階で見た顔。


そう、吉田稔麿だ。


…カチ。

誰かの刀の鍔が鳴った。


ッ!!


やっばい!!






冷静なあたしの第六感と本能が訴える。





やばい!!!!








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戦いのシーンは苦手っす…。

書き憎い〜…剣道とか武道をやった事が無いので、

どう動けばどうなるのかとか適当で…。

すみません↓。どうぞ、ツッコミは無しでw苦笑。

アンケート、どうやら新八っつぁんが一位みたいなんで新八っつぁん落ちになる予感。